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E3系「とれいゆ」は、2014年の山形デスティネーションキャンペーンにあわせた山形新幹線沿線の観光振興を目的に、2014年に登場した観光列車で、新幹線車両としては初の「リゾート車両」である。かつて秋田新幹線で用いられ、E6系の台頭で余剰となっていたE3系0番台のうち、R18編成が改造種車となっている。改造は川崎重工で行われ、改造後の車両番号は700番台となった。愛称の「とれいゆ」は、列車と太陽を表す「ソレイユ」を合わせた造語で、「『食(太陽の恵みによる様々な食材)』『温泉』『歴史・文化』『自然』を散策しながら列車旅を楽しむ」というコンセプトのもと開発されている。外装デザインは奥山清行氏によるもので、月山をイメージした「月山グリーン」、最上川をイメージしたメタリックブルー、蔵王連峰をイメージした白の3色を主体とし、側面は山並みを思わせる円弧を描くようなデザインとなっている。車内はモノクラスという扱いとなっているが、福島方の先頭車は元々グリーン車であった座席をそのまま活用している。2〜4両目は2人掛け×4人掛けのボックスシートとなったが、座面が畳敷きとなった他、座席間にはカバ材を用いた大型テーブルが備え付けられた。5両目(新庄方2両目)は「湯上がりラウンジ」と称される、バーカウンター付きのラウンジスペースとなった。ラウンジ部分は掘りごたつとなっており、座面は畳敷きとなっている。新庄方の先頭車両は「くつろぎの間」と称され、ソファーの他、本車最大の特徴ともいえる「足湯」が2槽設置された。足湯は窓に向けて設置されており、車窓を眺めながら足湯につかることができた。新幹線初の観光特化型車両である「とれいゆ」は2014年7月から営業運転を開始した。本列車の充当される列車は「とれいゆつばさ」と称され、基本的には福島〜新庄間で運用された。福島駅も在来線ホーム発着となったため新幹線区間に乗り入れることは殆どなかったが、走行機器類は変わらないことから新幹線区間では時速275km/hでの運転も可能であり、稀に団体臨時列車として東北新幹線内でも営業運転を行った。新幹線版「乗ってたのしい列車」の嚆矢として長く親しまれた列車となり、2019年には座布団柄の変更、足湯スペースへの「天童木工」を用いたソファーの設置などの小規模なリニューアルは行われたが、種車の製造から20年が経過し、老朽化が進んだことから2022年3月を以て惜しまれつつ現役を引退した。
2016,05,03 山 形 |