新1000形
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 2002年登場。旧1000形等、旧型車両の置き換えを目的に製造された地下鉄直通対応の通勤型車両である。本車は2006年までに製造されたアルミ車体のグループと、2007年以降に製造されたステンレス車体のグループに大別される。 アルミ製の車両は既に快特を中心に使用されていた2100形をベースとしており、赤を基調に窓周りがアイボリーとなった車体塗装や形式名のスリットが入ったワイパーカバーまで2100形と類似したものが採用されているが、こちらは都営浅草線等への乗り入れに対応した3扉の通勤型車両となった。車内は扉間と乗務員室背後がロングシート、車端部が補助椅子のついたボックスシートという2000形と類似した車内となり、車内案内表示器に続いてドアチャイムが京急では初めて搭載されている。また冷房装置の冷媒にオゾン層を全く破壊しない冷媒を採用しており環境にもより配慮がなされている。制御方式は次車により差異があり、2003年までに製造された車両がGTO-VVVFインバーター制御、2004年以降に製造された車両がIGBT-VVVFインバーター制御方式となっている。いずれも登場当初はSIEMENS製の機器を搭載しており、とりわけGTO-VVVFインバーター制御方式の車両は所謂「歌う電車」として利用客にも親しまれた。尚、この他にも方向幕の変更(黒幕→白幕→フルカラーLED)、ボックスシートの形状変更及びシートピッチ拡大といったマイナーチェンジが製造時期によってなされており、同一形式ながらバリエーションは豊富である。アルミ製の車両は2006年生の5次車に至るまで130両が製造された。このグループは初期車の製造から15年以上が経過したため、2017年以降に更新工事が順次施工されている。

 2007年に製造された6次車以降は大きく変わり、車体が京急では初となるステンレス製無塗装車体となった。無塗装ではあるがカラーフィルムを貼り付けることで従来車との乖離は小さくされている。前面の形状も従来車の面影を残しつつ刷新され、ワイパーカバーも廃されている(尚、前面のみ普通鋼製となっている)。車内は車端部を含めてロングシートとなり、乗務員室背後からは座席がなくなっている。また、従来車では固定窓だった側窓が一部開閉できるようになり、万一立ち往生した事態等にも備えている。制御方式はIGBT-VVVFインバーター制御方式であるが、従来車がドイツ製のものを採用していた機器類に関しては全て国産のものに刷新されている。このグループも次車によってマイナーチェンジが施されており、とりわけ2010年製の10次車では車内案内表示器が液晶となり、2012年製の12次車からは車内のライトがLED灯となるなど、サービスアップと省エネの両立を更に図っている。このグループでは従来なかった6連の編成も製造されており、旧型車を置き換えて京急のスタンダードへとなりつつある。更に2015年製の車両からは従来塗装に準じたラッピングの貼り付け、2016年製の車両からは車端部ボックスシートの復活がなされた他、2017年製の車両からはステンレス車ながら車体への塗装が復活するなどいわば「回帰」の流れを見せている。2020年度に製造された車両は総合車両製作所の手掛けるステンレス車体「sustina」が採用された。「京急ウィング号」の車両増結や貸切運用などにも用いるため更なるイメージチェンジがなされ、前照灯形状の変更の他、京急では初となるデュアルシートの採用、トイレの設置など、他の車両にはない特徴を兼ねそろえた車両となっている。

 このように登場次数によっては別形式と見紛うモデルチェンジが施されている同形式だが、アルミ車・ステンレス車を含めると現在の京急では最も両数の多い車両となっており、名実ともに2代目の「1000形」として主力車両として活躍している(なお、8連1本が2019年に事故廃車されており、全車が一堂に会したことはない)。


 2012,05,11 品 川


■Variation
 羽田空港第2ターミナル開業を記念し、ラッピングが施された新1000形。2004年12月から翌年3月にかけて新1000形のうち2次車16両にこのラッピングが施されている(あくまで塗装ではない)。水色の車体は当時の京急の車両として非常に異色の存在であったが、同車ラッピングの後、600形と2100形で「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」として青い塗装がなされており、その先駆けともいえる。因みに2次車は現行の白地の方向幕が初めて採用された他、側窓がグレーに着色された1枚窓となるなど外観上の変化が生じている。機器類も変更され、6連での運転は考慮されていない他一部機器は二重化もなされている。

 2005,01,01 羽田空港★
 1次車の4連は、IGBT-VVVFインバーター制御車の試験やLED式の行き先表示器への試験的な切り替え等、新たな機軸を採用するにあたっての試作編成となることが多い。この1405Fは、新1000形の中で最も早く国産の制御装置へ換装されており、また京急車では現時点で唯一東芝製の制御装置を搭載している点からも特筆すべき存在である。

 2012,11,20 立会川
 更新工事が施工された1次車。新1000形1次車の更新は2017年より漸次施工されている。施行車は2100形同様前面に「けいきゅん」のラッピングが施された他、前照灯がLED化され側窓が開閉可能となり、外観上の差異となっている。車内はレイアウトはそのままながら床材の交換や袖仕切りの大型化がなされており、車内案内表示器もLCDに換装されている。制御装置や冷房装置の換装も行われているが、特に前者は1001FがSiC-VVVFインバーター制御方式に更新されたのに対し2編成目の1009FではIGBT-VVVFインバーター制御方式となるなど、編成間で異なっている。1009Fは更新後も引き続き他社線に乗り入れているが、1001Fは京急線内の運用に固定され、他社線には乗り入れなくなっている。

 2019,07,26 京成曳舟
 同じく更新工事が施工された2次車。こちらもやはり一部の側窓が開閉できるように変更されている。この編成はSIEMENS製のGTO-VVVFインバータ制御装置を搭載した所謂「歌う電車」として最後の存在であったが、更新と同時に東洋電機製の制御装置に換装されているため、これにより京急から「歌う電車」はなくなっている。

 2022,05,04 品 川
 2005年に製造された3次車以降は更に機器類が変更となり、とりわけ制御方式がIGBT-VVVFインバーター制御装置に変更された点が特徴である。内装も更に改良が加えられ、内装材の不燃化や貫通扉の増設を始め、一部座席形状が変更された他ボックスシート部分はシートピッチが拡大している。このグループでは、種別・行き先表示は3次車が幕、4次車以降がフルカラーLEDを採用していたが、現在は3次車も含めてフルカラーLED化されている。

 2012,08,25 金沢八景
 「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」に続く特別塗装である「YELLOW HAPPY TRAIN」。普段あまり営業線上に姿を見せない事業用車をモチーフに、「幸せを運ぶ黄色い電車」というコンセプトで1057Fを対象に塗り替えが行われた。2014年5月よりこの姿で営業運転に供され、黄色地に側扉を銀色に塗った姿は西武鉄道の車両を彷彿とさせるが、その西武鉄道も京急に続いて「京急カラーの西武電車」を走らせるに至っている。

 2014,05,18 品 川
 元々1057Fの特別塗装は3年間の期間限定になる予定だったが、好評を博したことから2017年の定期検査出場後も黄色い塗装を維持し、再び「YELLOW HAPPY TRAIN」として走ることとなった。ただし側扉はそれまでの銀色から黄色に塗装変更されており、その点は従来からの差異となっている。

 2017,05,06 金沢八景
 2019年現在の1057F。「ONE PIECE」の新作映画とタイアップし、「ONE PIECE」のラッピングが施されている。

 2019,07,26 京成曳舟
 2007年以降に製造された6次車以降の編成はステンレス製となり、前面もアルミ車の面影を残しつつもワイパーカバーが廃されるなどそれまでの車両とは大きく印象が変わっている。車内はオールロングシートとなり、側扉はステンレス無塗装のものへと変更、更に乗務員室背後の座席が廃されている等内装面にも変化が生じている。尚、車内案内表示器については9次車まではLEDのものが採用されている。

 2011,02,16 京成高砂
 ステンレス製車両の4両編成は2008年製の8次車よりお目見えしている。既存のアルミ車とは異なり全電動車であり、中間に付随車を連結して6連も組成できるようになっている。

 2022,05,04 京急川崎
 2010年以降に製造された10次車は、外観こそそれまでのステンレス製車と変わらないが、案内表示器がLCDとなり、扉開閉時に点灯するランプが新設される等の変更点が生じている。このグループの8両編成は600形以来となる車上情報管理装置が搭載されており、2010年7月に開業した成田スカイアクセス線や京成本線高砂以東区間の日常的な走行にも対応する(なお、2018年からは直通の制約がなくなり、既存の編成も京成本線や成田スカイアクセス線に日常的に乗り入れるようになった)。

 2013,07,06 四ツ木
 2011年に製造された11次車からは800形置き換えを目的に新たに6両編成のグループも登場した。6両を組む編成は1300番台と区分されており、他編成との連結は考慮されていないため電気連結器は装備しない。2012年に製造された車両からは車内の照明がLEDに変更される等、従来以上に環境に配慮した車両となっている。

 2012,05,11 品 川
 2015年度に製造された15次車以降の4連は、運用の柔軟性を高めるため、貫通扉が中央に配されるという、他の1000形では見られない外観となったことが特徴である。この貫通扉に幌を取り付けることで、両編成間の行き来が行えるようになっている。これにより、4連単独運用や増結運用のみならず、2本併結し8両編成を組むこともでき、また車上情報管理装置も搭載したことで都営浅草線のみならず、成田スカイアクセス・京成本線への直通運転にも対応した。まさしくかつての旧1000形の特徴を引き継いだ車両といっても過言ではない。また、側面のカラーフィルムがアルミ車に準じた赤とクリームのツートンカラーとなっていることも特徴の一つである。この4連は新たに1800番台の車号が振られており、現在は3本12両の陣容となっている。

 2017,05,06 金沢文庫〜金沢八景
 2016年度に製造された16次車。この年度は6連と8連の増備もあり、6連と8連では前面形状は既存の車両と同一となっているが(ただし前照灯は京急で初めてLED灯を採用)、側面のカラーフィルムは15次車同様アルミ車に準じた配色となった。また、内装はアルミ車で採用されていたセミクロスシート配置が復活し、乗務員室背後を除く車端部には補助いす付ボックスシートが配されることとなった。このクロスシート部には京急の車両として初めて充電用のコンセントが設けられた他、車内案内表示器が多言語対応となるなど、更なるサービスの向上が図られている。8連の編成は既存番号の続番から車号が振られているが、6連については新たに1600番台の車号が振られている。

 2017,05,06 金沢八景
 2016年度に製造された16次車のうち、8連を組む編成については、主電動機、制御装置が変更され、フルSiC-VVVFインバーター制御方式となった。新造車両としては初めての採用である。本グループ以降に製造された8連は2000形の置き換えに重きが置かれたこと等から他社線には長らく乗り入れなかったが、2020年5月より漸次直通運用にも充当されるようになっている。

 2021,07,06 志 津
 2017年度に製造された17次車では、より「京急らしさ」を表現すべく、ステンレス製車両ながら全塗装が施されることになった。南海1000系や江ノ電2000形等の例はあるが、関東大手私鉄においてステンレス製車両に全塗装を施すのはこれが初となる。車内レイアウトは16次車に準じているが車内LCDは連続2画面配置となった。このグループは川崎重工と総合車両製作所で製作されているが、特に後者の一部はほぼ白一色という下塗りの状態のまま出場し、そのまま久里浜まで回送されたことで大いに話題になった。17次車は6連と8連がそれぞれ製造され、このうち6連は1600番台の続番となったが、8連については京急創立120周年を記念し1200番台となった。

 2018,05,20 大森町
 17次車以降の8両編成は京急創立120周年を記念し1200番台の車号が振られている。中でも1201Fは塗装途中の状態で落成し、そのまま営業線上を自走したため「白い京急車両」として話題になった。このグループも16次車同様しばらくは直通運用には就いていなかったが、2020年より直通運転にも充当されている。

 2022,04,17 京成津田沼
 2020年に製造された20次車は、それまでの1000形とは別形式と言って良い程のモデルチェンジがなされた。1890番台の車号が与えられたこの車両は4両で1編成を組み、貫通扉を中央に配したその姿は1800番台(15次車)をベースとしているが、こちらは総合車両製作所が手掛けるステンレス車体である「sustina」を採用しながら塗装車体となっている。下部の尾灯・標識灯は一体化され、600形から続いた形状から脱却した。また、車番はハイフン表記が採用されたが、これは600形以来の付番方法となった。制御方式はハイブリッドSiC-VVVFインバーター制御方式で、MT比が2M2Tに改められたため、主電動機出力が既存車に比べ向上している。また、各車にブレーキ受信装置が搭載され、それぞれをネットワークで制御することで、各車ごとに最適な制動を算出、調整し、結果的に編成全体のブレーキ力の安定化に寄与した。車内は京急の車両では初めてデュアルシートが採用され、「ウィング号」や貸切運用ではクロスシート、それ以外の運用時にはロングシートと切り替えることが可能である。また全席にコンセントが設けられている。中間車の車端部には男性用トイレと車椅子トイレ(ウォシュレット)が搭載されたが、京急車両でトイレを搭載した車両は同車が史上初である。それまでの1000形とは全く異なる車両となったこの1890番台は、2021年5月より営業運転を開始し、日中のエアポート急行の他、朝時間帯の「モーニングウィング号」にも充当されている。後日、公募により「Le Ciel」という愛称がつけられたほか、2022年には2000形以来となる鉄道友の会ブルーリボン賞に選ばれている。

 2022,05,04 京急川崎
 2022年ブルーリボン賞受賞記念のステッカーが貼り付けられた1890番台。私鉄車両の中で、同一形式の中の一部車両のみがブルーリボン賞に選ばれる事例は本車が初の事例であったが、本番台では京急で初採用となるデュアルシートやトイレ等を設備を備え、かつ堅実性も兼ねそろえたトータルバランスに優れた車両であるという点が評価されて受賞に至っている。なお、同年のローレル賞は京阪3000系の「プレミアムカー」3850形が受賞されており、こちらも「一つの形式の中の一番台」が受賞対象となっている。

 2023,12,17 八丁畷
 2023年以降に製造された22次車は既存の先頭形状をベースとしつつ、随所に1890番台の特徴が反映されている。1890番台と同じく「sustina」鋼体が採用され、尾灯兼標識灯が1890番台と同一形状になっているのが外観上の最大の特徴で、他に既にデジタルSRアンテナ移行後に製造されたことからIRアンテナが省略されている。車内はロングシート主体で車端部がボックスシートというセミクロスシートとなっている。また、1890番台と同様乗務員室背後にもクロスシートが復活している。制御方式は6連がハイブリッドSiC-VVVFインバーター制御、8連がフルSiC-VVVFインバーター制御となり、機器配置も従来車とは異なるものとなている。このグループでは6連が1500番台、8連が1700番台となったが、1500形との車番との兼ね合いか、こちらも1890番台と同様ハイフンによる付番がなされている。2023年度は6連と8連が各1本ずつの落成となったが、今後も1500形置き換えを目的とした投入が続くものと思われる。

 2024,01,28 京急川崎

2024/03/16