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2017年8月より鬼怒川線で運行を開始した「SL大樹」は、当初JR北海道より貸与されたC11形207号機のみが牽引にあたっていたが、安定的なSL列車運転の実現及び「鉄道産業文化遺産の保存と活用」という目的から、自社で所有するSLを増備することとなった。この経緯から新規で動態復元を行うにあたり、白羽の矢が立てられたのが北海道江別市内で静態保存されていた元釧路開発埠頭のC11形1号機である。本機は国鉄のC11形と同型車両ではあるが、元々は1947年に江若鉄道(浜大津〜近江今津間を現在の湖西線に近いルートで運行していた私鉄、湖西線建設に伴い1969年に廃止)が自社発注したものであり、日本車輌で落成した。落成当初は無番号で「ひえい」という愛称で呼称されていたが、ほどなくC111という車両番号がついた。江若鉄道では客貨輸送に従事し、DD13形ディーゼル機関車に追われるように運用を離脱、1957年に北海道釧路の雄別炭鉱鉄道に譲渡されている。雄別炭鉱鐵道(後に雄別鉄道に改称)では翌1858年から運用入りしたが、同社では国鉄払い下げもしくは私鉄の同型機も複数在籍し、主力車両の一翼として用いられた。雄別鉄道は1970年の雄別炭鉱閉山を機に路線の大半が廃止となるが、唯一残された新富士〜雄別埠頭間の貨物線が釧路開発埠頭に譲渡されると本機もそこの所属となり、そのまま1975年まで用いられた。廃車後は前述のとおり江別市内で静態保存されたが、所謂「山田コレクション」と称する個人所有となり、45年近く屋根付きの車庫内で保存されていた。長らく個人所有であったが、2011年以降は日本鉄道保存協会の管理に移行し、東武鉄道は同協会から本機を譲受している。2018年11月に江別市内から南栗橋まで輸送され、その後大規模な修繕及び改造が行われることとなった。当初は2020年冬には復元完了を予定していたが、車体の老朽化や世情もあり、復元(火入れ)は2021年12月と1年後ろ倒しとなった。キャブや水タンク、罐胴など老朽化が顕著であった部分は新造され、また東武鉄道の他のC11形同様、ATS車上子やL字型アンテナの設置、ヨ8000形と連結する際のジャンパ連結器の新設など、東武鉄道を走行するにあたり必須の機器類も新たに搭載されている。更に復元後の本機の特徴として、前照灯がLED灯となり白色に点灯する点があげられる。本機復元中の2020年秋には「将来に向かって更なる飛躍を車両番号で表現」することから車号をC11-123とすることが公表されており、復元後は新たなナンバープレートがつけられている。本機は2022年7月から「SL大樹」の牽引機に充当されるようになり、これにより東武鉄道のC11形は3機体制となった。ここまで記したように本機は国鉄籍になった期間が皆無であり、現在車籍のある蒸気機関車では唯一の私有機となっている。
2023,02,11 鬼怒川温泉 |