2000系
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 試作車が1989年、量産車が1990年に登場。台頭しつつあった高速バスやマイカーへの対抗のため、特急列車の更なるスピードアップを図る目的で開発された、JR四国としては初の新形式車両である。JR四国では国鉄時代から続いた車両形式によらず、私鉄にみられるような4桁の車両番号を採用することになったが、2000年を前に開発された車両ゆえ、2000系という形式がつけられている。本形式最大の特徴は、381系以来2例目となる振り子式車両であるとともに、世界初の「制御式振り子装置を搭載した気動車」ということである。従前、振り子式の気動車は実現不能と言われていた。液体式気動車の場合、エンジンから変速機を通じて生じた出力を、推進軸を介して車輪に動力を伝える機軸となっているが、推進軸自体が曲線通過時の振り子動作に際し抵抗となりえたこと、1エンジンしか搭載していない場合、動力伝達時の反トルク作用により、回転力が失われて車体傾斜ができないと思われたからである。そこで、捻じれと伸縮、高速走行のいずれにも耐えうる推進軸系統が開発された他、1車両にエンジンを2基前後対称に配置し、回転軸の推進方向を前後で逆に設置し、反トルク作用を相殺すること、これら工夫により、気動車でも車体傾斜が可能であることが証された。これらはJR総研との共同開発で実現しており、本形式に先立ちキハ58系を改造した試験車両でデータの収集が行われた。また、制御付き振り子装置を本格実装したのも本系列が初の事例となる。車両情報装置に予め線形データを記録しておき、その記録を元に曲線に入る手前から車体を傾斜させることで、自然振り子式よりも曲線通過の乗り心地の向上が図られたもので、国鉄時代から381系を用いた試験が行われたものだが、正式採用はJRになってからとなった。エンジン出力は330PSで、これを2基搭載することで1両あたりの出力は660PSとなる。これと新型変速機の組み合わせにより、既存の気動車に比べて大幅な速度向上を果たし、前述の制御式振り子装置と併せ大幅な所要時間短縮を図った。試作車は前述のとおり1989年に製造され、2000形(非貫通先頭車、振り子制御装置付き)、2100形(貫通型先頭車)、2200形(中間車)の各1両が製造された。いずれも軽量ステンレス製で、窓周りを黒くした他、JR四国のコーポレートカラーである水色の帯を巻いている、2000形の前頭部は流線形となっており、窓周りが黒い所謂「ブラックフェイス」となっている。側扉はプラグ式が採用されている。試作車の車内はモノクラスで、回転式リクライニングシートが980oピッチで展開する。量産化に失敗したことを見据え、観光列車への転用も考慮に入っており、オーディオ装置を搭載する他2101号車にはソファスペースが設けられていた。車内案内表示器や自動放送装置も当初から実装されている。試作車は1989年3月のダイヤ改正で臨時「南風」「しまんと」で営業運転を開始し、試験と並行して営業運転が行われた。試験の結果量産車の投入が決まり、翌1990年から量産車の投入が開始された。量産車は灯具配置が異なる他、一部を除き愛称表示器が新設され、更に警戒色で前面に黄色の帯が巻かれたため、試作車とは印象が異なる。2000形は試作車と異なり半室グリーン車が設置されているが、グリーン車は2+1配置でシートピッチは1170oとなっている。また、普通車の座席は所謂「バックシェル」タイプの座席になる等変更点が生じている。量産車投入に併せて試作車も量産車化改造がなされ、ソファスペースは撤去されている。量産車は1990年7月のダイヤ改正で暫定的に投入され、同年11月のダイヤ改正では岡山発着の「南風」「しおかぜ」、新設された「あしずり」「宇和海」を主体に本格的な運用を開始した。同車の投入により、岡山〜高知間の所要時間は約40分も短縮されている。試作車、量産車を併せて60両が製造された他、土佐くろしお鉄道でも同型車4両が配備された。1995年以降に製造されたN2000系を含めると80両の陣容になり、振り子式気動車のパイオニアながら最も両数の多い形式となった。なお、試作車及びN2000系を含め全ての車両が富士重工で製造されている。予讃線、土讃線の特急を主体に運用された他、JR西日本にも試験の一環で広島地区に貸し出された実績がある。2010年以降は一部車両のリニューアルが施されているが、後継車両の導入が計画されたこともあり、当初予定に比べて施工車両は大きく減少している。長らくJR四国の看板車両として用いられてきた2000系だが、製造から30年近く経過し老朽化が進んだことから、後継として2700系が投入されることになり、2018年に試作車のさよなら運転が行われたことを皮切りに、2019年から2021年にかけて2700系の台頭と共に急速に廃車が進んだ(それ以前には2005年の事故で2両が廃車されている)。現在は量産車11両のみ残存し、2000形及び2200形は全廃となっている。残存車は松山と高知に点在し、「あしずり」「宇和海」で用いられている。

 2013,12,30 伊 野


■Variation
 1989年に試作された車両の非貫通型先頭車となる2001号車。試作車はの「TSE」の愛称がついていたが、これは「TRANS SHIKOKU EXPERIMENTAL」に略である。他の2000形がグリーン車合造であるのに対しこちらは全室普通車となっている。他の2000形とは異なり車番表記の代わりに「TSE」の表記がされている他、愛称表示器や黄色の警戒帯は当初より設けられていない。

 2017,05,04 松 山
 試作車の高松方先頭車となる2101号車。2001号車と比べて量産車とのデザインが大きく異なっている。当初は前面貫通構造かつ貫通扉は二重であり、外側の貫通扉は両開き式プラグドアとなっていた。プラグドアは後に1枚引き戸に改造されたあと、形状はそのまま非貫通構造に改められた。本車のみ、登場当時は車端部にミニラウンジを備えており、団体輸送も考慮されていたが、こちらも量産化改造時に撤去され、通常の座席が配置された。TSE編成は末期は特急「宇和海」に専属使用され、2018年に営業運転を退いた。現在は2001号車と2101号車が多度津工場に保存されている。

 2017,05,04 松 山
 前面が非貫通構造の2000形。制御振子装置を備え、編成の宇和島方先頭に連結された。試作車とは異なり量産車はグリーン車と普通車の合造となった。グリーン車はJR四国では初の3列配置で、当初は荷物棚がハットラックとなっていたが、後年通常の荷物棚へと改造されている。2000形量産車は2002号車から2011号車の10両に、土佐くろしお鉄道所有の1両(2030号車)を加えた11両の陣容で、「南風」「しおかぜ」「宇和海」を中心に使用されたが、「しおかぜ」の全車電車化や「南風」への2700系の投入により2021年3月のダイヤ改正で定期運用を失った。

 2013,12,31 多度津
 宿毛、宇和島方の貫通型先頭車である2150形。モノクラス編成の下り方先頭に立つ機会があるため、振り子制御装置をを備えている。量産車にしかない形式で、現在も5両が現存している。

 2017,12,31 宇和島
 「アンパンマン列車」となっている2000系。2000系を使用したアンパンマン列車は2000年から運行されており、何度かのラッピングリニューアルを経ている。かつては土佐くろしお鉄道所有車を含め複数の車両がアンパンマン列車となっていたが、2700系が台頭した現在は「宇和海アンパンマン列車」として2両が8000系に類似したラッピングが施されている。

 2015,08,22 松 山
2021/04/13