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キハ30形は当時の流山鉄道が自社発注した、同車としては初の自走客車であり、1933年と翌年に1両ずつ製造されている。全長9m級の半鋼製2軸ガソリンカーであり、1933年製のキハ31は馬橋方にバケットを備えていた。キハ31については内燃機関としてフォード製の4気筒ガソリンエンジンを搭載している。1934年製のキハ32も同じく馬橋方にバケットを備え、ウォーケシャ発動機製の6気筒エンジンを搭載した他、石油燃料の不足から流山方に木炭ガス発生装置が取り付けられている。いずれも外装はぶどう色一色であり、車内はロングシートとなっていた。2両とも戦中期における主力車両として活躍したが、またキハ32の木炭ガス発生装置は性能が芳しくないため程なく撤去され、撤去された跡はバケットとなった。そのためキハ32については両側にバケットを有することとなった。流山鉄道は1949年に電化され、併せて電車の導入が始まったことで本車はトレーラー代用となり、その後バケット部の撤去や走行用機器類の撤去により完全に付随車化され、形式もサハ30形と改称されている。サハ31は付随車化のみならず客室部分を旧バケット部まで延伸する改造がなされており、これにより扉間の窓数が異なることになった（客室延伸したサハ31は扉間6枚、サハ32は扉間5枚）。電化当初は電動車が3両のみだったこともあり、その後もラッシュ時の増結用として使用されたが、電車の台頭が進んだこともあり、1963年には2両とも除籍されている。除籍後も倉庫代用として長年に渡り流山駅構内に留め置かれていた。特にサハ31については1970年代まで倉庫代用で用いられたが、1980年に流山市総合運動公園の敷地内に移設され、以降同地で静態保存されている。客車化された後の姿ではあるが、戦前製の気動車を出自とする車両は現存例が少なく、その点貴重な車両である。 2025,04,20 流山市総合運動公園 |