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立山黒部アルペンルートの一角を形成する黒部ケーブルカーは、黒部ダムの一角に位置する黒部湖と、立山ロープウェイに接続する黒部平までの間を結ぶケーブルカーであり、1969年に開業した。両駅間の全長は凡そ830mで、その標高差は373mとなっている。山上側に位置する黒部平駅の標高は1828mで、これは立山トンネルトロリーバスが廃止(電気バスに移行)された2025年時点では、鉄道事業法に基づく鉄道駅としては最も標高が高い。雪害の防止及び自然保護の観点から、ほぼ全線に渡って地下トンネルの中にあり(厳密には黒部平のみ地上部に位置)、これは全国のケーブルカー(鉄道事業法に基づくもの)の中では本路線と青函トンネル記念館にしか例がない。なお、黒部平駅は開業当初黒部御前駅という駅名であったが、翌年の立山ロープウェイ開業時に改称されている。
黒部ケーブルカーは現在も開業当時からの車両を使用しており、路線開業に合わせて汽車会社で製造されたものである。車体はケーブルカーとしては採用例が少ないアルミ合金製である。この鋼索線は最大傾斜が31°(58.7%)で最緩勾配も40%を超えており、その路線特性にあわせるため車体傾斜が非常に急になっている。外装はクリームとオレンジを組み合わせたもので、開業以来変わっていない。前述のとおりほぼ全線がトンネル内にあり、トンネル断面の関係で非常時に側面からの脱出が困難であることから、ケーブルカーとしては非常に珍しく前面には非常用の貫通扉が設けられている。側扉は片開式かつ外吊り式になっている。車内はボックスシートで、落下防止の観点か山麓側の座席には大型のフレームが取り付けられている。また、側窓は内折れ式となっている。製造当初から大きなレイアウトの変更はないが、車端部には車内案内表示器が追設されている。製造から55年以上経過しており、現存するケーブルカーの中でも非常に部類に入る車両ではあるが、現在もなお立山黒部アルペンルートを構成する一部であり、観光客、登山客などの足として活躍が続いている。
2016,07,08 黒部湖 |