12-000形
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 12-000形という形式の嚆矢は、1986年に製造された次世代向けの試作車両であり、東急車輛にて2連1本が製造された。後の量産車とは似ても似つかぬデザインであり、また軽量ステンレス製の車体が採用されていた。車内はバケットタイプのロングシートであり、前面に次駅案内装置を設ける等新しい内装の試作もなされた車両であった。当時まだ都営地下鉄で実用化されていなかったVVVFインバーター制御方式の採用や車両の小断面・低床化を目論み馬込検車区及び浅草線の一部区間にて試験走行が実施されたが、その後鉄輪式リニアモーターの実験車両に再改造され、再び同区間にて試験を行った。尚、VVVFインバーター制御方式や鉄輪式リニアモーター以外にも、ボルスタレス台車や液晶行き先表示器などの新機軸も導入されている。同車はあくまで試作車という位置付けから車籍は当初からなく、実験終了後はそのままお役御免となった。現在は千早フラワー公園にて静態保存されている。

 量産車はリニアモーター駆動方式の採用が決まった12号線(現在の大江戸線)用の車両として1990年より順次製造が開始された車両である。試作車同様小断面・低床車体が採用されたが、こちらは軽量アルミ車体が採用されている。また、試作車が角ばった車体であるのに対しこちらは丸みを帯びた車体となり、より柔和な印象をもつこととなった。リニアモーター駆動方式の他、VVVFインバーター制御方式やLED式行き先表示器、ATO装置による自動運転、扉鴨居部の車内案内表示器など、当時他事業者でも採用されつつあった新しい機軸が多数搭載されている。初期に製造された1・2次車はアルミ塗装車体が採用され、制御方式はGTO-VVVFインバーター制御方式となっている。とりわけ1次車ではリニアモーター台車の比較として異なる3種類の台車を編成ごとに変えて取り付けていたが、後に1種類に統一されている。車内案内表示器は当初路線図とLED表示器が一体化されたものが採用されていたが、国立競技場延伸にあわせて現行の2段式案内表示器の千鳥配置に変更されている。1997年の新宿延伸時に製造された3次車以降は大幅なマイナーチェンジがなされており、アルミ地は無塗装化され、前面の傾斜が緩やかとなりグラデーションの帯を巻いた姿となった。また制御方式はIGBT-VVVFインバーター制御方式に変更されており、車内の案内表示器も当初から2段表示式のものとなった。このグループから8連で製造されており、6連を組んでいた1・2次車にも編成増強のためにこのグループの車両が組み込まれたが、編成美を保つためにその車両のみアイボリーに塗装されている。路線延伸や輸送力増強に合わせて増備が繰り返された為、12号線開通時は6連5本と言う陣容だったものが大江戸線全通を控えて製造された4次車を含め、総勢8連53本と都営地下鉄の車両として最も良数が多い形式に成長した。現在は12-600形も運転を始めているが、引き続き大江戸線の主力車両として活躍しており、更に現在は修繕工事も施工されているが、初期車は製造から25年が経過しているため、12-600形の増備によって順次置き換えられることとなった。


 2012,08,11 大 門


■Variation
 1990年から1995年にかけて製造された1・2次車はこの形態となっている。アイボリーに塗装されている他前面の傾斜がきつくなっているなど数多い3・4次車とは趣が大きくことなっている。1期線である光が丘〜練馬間開業時はこの車両しか存在しなかったが、全線開業にあわせ3・4次車が大量に製造された現在、少数派の存在となっている。このグループは全て修繕工事が施行されており、ドア部分の床の着色や黄色いテープの貼り付けなど、後天的な改良もなされているが、12-600形の増備に伴い順次廃車され、2016年に全車廃車されている。

 2012,08,11 大 門
 1997年の練馬〜新宿間延伸に合わせて製造された3次車。本グループから無塗装となり印象が変わった他、制御方式もIGBT-VVVFインバーター制御となった。このグループも2018年以降12-600形の増備による置き換えが計画されている。

 2012,08,11 大 門
 4次車については2018年より12-600形2次車にあわせた改造が施された車両が在籍し、行先表示器がフルカラーLED、車内案内表示器がLCDにそれぞれ換装されている。なお、この他編成によっては前照灯のLED化も進みつつある。

 2019,02,17 清澄白河
 量産車とは似ても似つかぬデザインの試作車。軽量ステンレス製で、前面部はFRPで成形されていた。デザインは異なるものの、運転台が右側に設けられているなど量産車に通じる部分もある。試作車は大江戸線開業前に浅草線・馬込検車区で試験が繰り返された後そのままお役御免となったため、大江戸線の路線を走行した事はない。しかし同車で培われた技術が量産車で開花している点は紛れもない事実であり、その意味からも鉄道史にその名を刻む車両であると言っても過言ではない。現在は2両とも豊島区の千早フラワー公園に静態保存されており、1両は集会場としても活用されている。

 2007,05,28 千早フラワー公園