クハ600形
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 長島ダム建設に伴う1990年の井川線一部線路切替・アプト式区間開通に際しては、それまで上下列車とも機関車が客車を牽引していた井川線の列車組成形態が、常に千頭側に機関車を連結し、井川方先頭に制御客車を連結する、「ペンデルツーク」と呼ばれる形態へと変更されることとなった。これに際し、制御客車として用意された車両がクハ600形であり、4両が落成した。スロフ300形とは車両寸法はほぼ同一で類似した形態であるが、井川方は運転台を有しており、窓上に丸型の前照灯、窓下に角型の尾灯を備える。また急曲線の多い路線特性もあり、尾灯の下に可動式の補助灯も備えられている。なお、中間車としての使用も考慮され、運転台がある側にもジャンパ栓が取り付けられている。屋根形状はスロフ300形が丸屋根であるのに対しこちらは平面屋根が採用されている。4両のうちクハ601はスロフ310(初代)を改造しているが、残り3両はトキ200形の台車を流用し日本車輌で車体を新製しており、形態は同一ながらクハ601よりも側窓が大型化している(クハ601の台車も元はトキ200形の流用であるため、台車については4両とも共通である)。車内は端部を除きボックスシートで、レイアウトはスロフ300形に準じ大井川に面している側が4人掛け、片方が2人掛けとなっている。なお、全車とも暖房装置を搭載している。前述のとおり井川方端部には運転台が設けられているが、アプト式区間開通に際し同区間の牽引・押し上げに電気機関車が連結されることとなったため、主幹制御器はディーゼル機関車用・電気機関車用の2つが装備されている。前述の組成形態のため、現在の井川線では全旅客列車の井川方先頭にクハ600形がつき、井川線の客車では最も馴染み深い車両であるといえる。また同車落成以降、嵯峨野観光鉄道やJR北海道の「ノロッコ号」など同様の形態をもつ車両が落成しており、本形式はその嚆矢ともいえる存在である。なお、近年は前照灯がLEDに換装されている。

 2014,01,25 奥 泉