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E10形は1949年の大井川本線電化開業に伴い増備されたD級電気機関車で、三菱重工業で2両、日立製作所で1両が製造された。全長12.8mのデッキ付き箱型車体である点は共通しているが、3両とも全長以外の車体寸法や形状に差異があり、とりわけ日立製作所製のE103号機は主電動機まで異なっている。いずれの車両も、機関車としては珍しく警笛にタイフォンを採用している。電化当時は電動客車が存在しなかったことから同機が旅客輸送・貨物輸送の全てを担っていたが、1951年以降順次電車が導入され、E10形は貨物輸送中心に転じている。1976年に開始された蒸気機関車の保存運転に際しては、勾配区間への対応として後部に補機を連結することとなり、これにE10形が抜擢されている。貨物輸送縮小とは逆に再び旅客列車に連結されるようになり、貨物輸送廃止後は工事用臨時列車を除けば基本的に蒸気機関車列車の補機としての位置づけを担うようになった。一貫して大井川本線に従事した三菱重工業製の2両とは異なり、日立製作所製のE103号機は一時岳南鉄道に譲渡されるなど比較的複雑な経歴をたどっている。E101号機は2011年以降運用を離脱していたが、大規模修繕を伴う全般検査を施工の上2014年に運用復帰している。この際主電動機を同型の神戸電鉄701号機のものに換装しており、同時に側面のルーバーが埋められている。併せて警笛がホイッスルに換装されている。E103号機が長期休車の末に2016年に廃車解体され、現在は後継のE31形も導入されているが、残る2両については引き続き補機としての活躍が続いており、近年は先頭に立って旅客列車を牽引する機会も増えている。なお、自社発注の3両以外に1960年に国鉄を廃車となったED38形2号機を譲受及びE10形への上E105号機として竣工させているが、こちらは1967年に秩父鉄道へ転じている。
2015,09,22 新金谷 |