ロコ1100形
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 元は1930年に日本車輌にて1両製造された阪和電気鉄道の機関車であり、1940年の南海鉄道への合併、1944年の国鉄編入を経て、1949年に近江鉄道に貸し出された後1951年に正式に譲渡されたものである。全長およそ10.3mの凸型30t機であり、正面左側に乗務員扉を備えたため、ボンネットが向かって右側にオフセットされている。この機関車は天王寺駅構内における貨物入れ換えを目的に製造されており、33‰の急勾配を有した同所の特性もあり、当初より発電ブレーキや回生ブレーキを備えていた。また、直流1500V線区の車両でありながら低電圧線区の車両のように直接制御方式が採用されているが、これは入れ替え時における応答性向上を狙っての採用であり、前述のとおり入れ換えに徹底した機構を有していた。因みに形式の「ロコ」はLocomotiveの略であり、旅客車の「モタ」「モヨ」等と同じく阪和電気鉄道独特の称号であった。本線用の電機であったロコ1000形が国鉄への編入後、1952年にED38形と形式変更されたのに対し、こちらは称号改正前に近江鉄道に貸し出されていることから国鉄時代に形式は変更されず、近江鉄道でも独特の形式名がそのまま引き継がれている。近江鉄道でも彦根駅構内及び住友セメント彦根工場専用線での入れ替えを目的に使用されたが、こちらは急勾配がないため回生ブレーキは撤去されており、塗装も水色を基調に台枠を黄色く塗装したものに改められている。近江鉄道でも入れ替えに専属し本線での走行は殆どなかったものの、貨物輸送廃止後も半世紀以上に渡り使用され、いわば「縁の下の力持ち」として活躍した。2004年に車籍は抜かれているものの、それ以降も機械扱いとして時折入れ替えに従事することもあった。基本的には彦根駅構内の「近江鉄道ミュージアム」で他の機関車と共に展示されていたが、「近江鉄道ミュージアム」の閉鎖に伴い2019年3月に解体搬出された。同年には秩父鉄道に残存したED38形も解体されたため、阪和電気鉄道出自の機関車はこれで全廃となった。

 2014,04,26 彦 根


2019/09/01