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現在新交通システムが多摩湖〜西武球場前を結ぶ西武山口線だが、新交通システムとなる前は西武園ゆうえんちとユネスコ村という2つの遊園地を結ぶ、全長3.6km、軌間762oの軽便鉄道であった。元々は西武園ゆうえんちの遊戯施設として1950年から翌年にかけて建設されたが、これを1952年に地方鉄道法に基づく鉄道扱いとしたものである。開業以来「おとぎ電車」という愛称で機関車が客車を牽引するスタイルで運行され、1977年からは蒸気機関車も投入される等、遊戯施設と観光鉄道を兼ね備えた存在であったが、前述のとおり新交通システムへと発展的解消を遂げることとなり、1984年に軽便鉄道としての運行に幕を下ろしている。
B11形は、「おとぎ電車」が地方鉄道扱いとなった1951年以降に製造された、地方鉄道法に基づく鉄道車両としてはこの当時珍しい存在であった蓄電池機関車である。全長5m級の凸型で、申し分程度に設けられた乗務員室の左右にボンネットが広がり、それぞれのボンネットに出力11kwの蓄電池が格納されている。塗装は白と青の特徴的なもので、当時の近未来を体現したかのような印象となっている。前照灯は中央に1灯(ただしB11の落成当初はライトすらなかった)配置で、左右の通風口部分は赤く塗装されあたかも尾灯の様相を呈している。また、屋根上には警笛として用いられる鐘が取り付けられている。前述のとおり、蓄電池を走行電力としており、両側のボンネットに格納された蓄電池から出力される電力で走行した。元々遊戯施設として開業した際にB1形という凸型蓄電池機関車が配備されていたが、出力はB1形よりも増強されている。ブレーキは手ブレーキのみであり、乗務員室内にはブレーキハンドルが鎮座している。B11形は1960年までに5両が配備され、山口線の主力機として活躍した。B11のみ中島電気自動車製、残る4両が西武所沢車両工場製で、前者と後者では車長がやや異なる他、窓形状や前照灯の位置、ボンネット形状(B12以降は丸みを帯びておりボンネットの傾斜が急)など外観上に多数の差異がある。また、前面窓は元々固定窓だったが、後年中央の窓が開閉可能となり、製造時よりも小型化される等の変遷を経ている。前述のとおり「おとぎ電車」としての山口線は1984年に休止され、その時点で西武鉄道ではお役御免となったが、B13とB15の2両は客車数両と共に大井川鐵道に譲渡されることとなった。ここでは使用されることなくしばらくの間千頭駅構内に留め置かれていたが、その後は浜松市内の宗教法人に譲渡され、同地ではしばらく稼働状態を維持していたが、21世紀初頭以降は使用されずにおかれていた。これを2023年に関水金属が譲受し、新トモエ電機工業にて整備されることとなった。2機のうちB13は動態復元のうえ、鶴ヶ島市内にある鶴ヶ丘児童遊園内の「KATO Railway Park」で保存されている。B15は西武リアルティソリューションズに再譲渡の上、2024年9月に生まれ故郷である西武所沢車両工場跡地にオープンした商業施設「所沢エミテラス」の一角に静態保存され、再び日の目を浴びることとなった。
2024,11,23 所沢エミテラス |