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西武鉄道では2030年度までに直流モーターを搭載する抵抗制御車、界磁チョッパ制御車を一掃し、全車両をVVVFインバーター制御車とする計画を2022年に立てた。この計画では車両新造の他、他社で使用されているVVVFインバーター制御車両を譲受し導入することで、全体的なイニシャルコストの軽減を図ることとなった。この「他社から譲受したVVVFインバーター制御車両」を西武鉄道では「サステナ車両」と呼称することとし、その第1陣として小田急電鉄で使用されていた8000形を西武仕様に改造の上導入することとなった。この車両は小田急時代の形式を継承し、西武鉄道でも8000系という形式がつけられた。既に小田急8000形は製造から40年が経過しているが、更新工事によりIGBT-VVVFインバーター制御となっている点、1編成が4両ないし6両であり組成変更なく導入可能である点から白羽の矢が立てられたもので、このうち屋根部の溶融滴下対策が施された6両編成を譲渡対象としている。外装はアイボリーホワイトを基調とし、30000系や40000系でも採用されている青と緑のグラデーションをあしらったものとなっている。このグラデーションは中央が緑、外縁部が青となっており、側面上部に同色の帯が巻かれた他、前面・側面とも窓下は同色の市松模様が配された。前述のとおり小田急時代にVVVFインバーター制御方式に改められていることから、走行機器類はほぼ小田急と同一のものとなっているが、停電時等に活用される蓄電池が1基追設されており、編成内で2基の設置となった。その他、保安装置や集電装置、乗務員室扉横の手すり等の換装、電気連結器の撤去等が改造点として挙げられる。台車は小田急時代から継承されており、西武鉄道では初のアルストムリンク式台車となった。車内はオールロングシートで、基本的なレイアウトは小田急時代から大差ないが、車端部の座席が4人掛けから3人掛けに改められており、併せてスタンションポールが移設されている。その他広告枠が西武仕様に改められている。扉鴨居部の車内案内表示器は小田急時代のスクロールLED式のものが引き続き用いられている他、ドアチャイムも小田急時代のままとなっている。8000系はまず6連1本が2024年に搬入され、改造や試運転、習熟運転を経たのち、2025年5月から営業運転を開始した。試運転では西武線の大半の路線に入線し、池袋、西武新宿や西武秩父にも乗り入れた。基本的には国分寺線で運用されるが、西武園線での運用も想定されている他、拝島線の区間運用(小平〜玉川上水間)にも既に充当されている。8000系は6連7本が導入される予定で、同数の2000系を置き換える見込みである。
2025,06,29 小 川 |