Tc1形
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 1961年登場。高度成長期を迎え沿線人口、乗客が飛躍的に増大していた当時の札幌市電では、特にラッシュ時における輸送改善が求められていた。その中で、ラッシュ時はトレーラーを連結した2両で運行し、閑散時間帯は単行でも運用できる車両が開発された。これが俗に言う「親子電車」で、「子」にあたる片運転台のトレーラーがこのTc1形である。M100形と共に日本車輌で製造された。車体デザインはM100形に準じており、ラッシュ対策として中扉は両開き仕様となっている。前述のとおり片運転台構造であり、運転台のない側には棒連結器やジャンパ連結器が備えられているが、前照灯や尾灯の類は設けられていない。車長はM100形よりやや短い。本車はトレーラーとして製造され、形式も「Tc」となっているが、札幌駅北側から札幌市街に抜ける鉄北線には、国鉄札幌駅を立体交差で跨ぐ区間があり、同所の勾配対策として本車にもモーターが1基搭載されており、厳密には「Mc」となる。また、屋根上にはトロリーコンタクター操作用のビューゲルを備えていた。ただしビューゲルは前述の目的で設置されていたため集電装置としては機能せず、結果1両での自走は不可能であり、運用時は常時M100形の連結を必要とした。車内はオールロングシートでM100形に準拠しているが、運転台のない側は立ち客用のスペースとなっており、中央に掴み用のポールが配された他、妻窓上にもカバー付き蛍光灯が取り付けられていた。M100形と共に、主にラッシュ時の混雑が常態化していた鉄北線系統(北24条〜すすきの〜教育大学前)で用いられたが、いくら両側に連結可能な設計とはいえ自走不能な車両の着脱は煩瑣であり、そのため常時2両連結での運行が常態化してしまった。これは閑散時間帯も両方の車両に乗務員配置を強いられることを意味した他、車長が長くなることで曲線通過時における自動車通行の妨げが他の車両よりも顕著となり、それらも問題となった。同車より後にラッシュ対策で製造された車両は全て連接構造が採用されたため、着脱可能な2両連結車は本車・M100形が唯一の事例となった。Tc1形は1970年にM100形のワンマン化改造が施されたことにより余剰となり、市電大幅縮小の余波を受け、翌1971年には廃車の憂き目にあってしまった。相方のM100形がワンマン化及び修繕工事がなされ、2021年10月の引退まで半世紀に渡り活躍を続けるのと対照的に、こちらは僅か10年に満たない活躍期間となってしまった。ただし廃車後も当初は幌北車庫での保管の後、後に札幌市交通資料館に移設されて現在に至るまで静態保存されている。M100形と異なり前照灯横の通風口や木製の床材など登場時の面影を残している。塗装も長らく引退時の塗装が堅持されていたが、2021年にM100形が後年纏っていた白帯を配した姿に塗装変更されている(Tc1形はワンマン化改造や修繕工事を施されていないため、白帯を巻いた姿で営業運転を行ったことはない)。

 2014,06,28 札幌市交通資料館


■Variation
 運転台のない側にはジャンパ連結器が備えられていた。連結するM100形が非貫通構造のため、こちらも非貫通となっている。

 2014,06,28 札幌市交通資料館

2021/11/23