D1040形
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 D1040形は、1964年の鉄北線麻生〜新琴似駅前間開業を前に、増発を目的として東急車輌にて製造された車両である。当時鉄北線は北24条以北が非電化で建設されており、「路面電車」ならぬ「路面気動車」が幅を利かせていた。同車もそんな「路面気動車」の一車両で、且つ一番最後に製造された形式である。出力130PSのディーゼルエンジンを搭載し、走行性能は前年に製造されたD1030形に準じるが、車体デザインは電車を含めそれまでの車両とは大きく変わっており、前面は大型窓の3面構成が特徴の半流線型形状となり、両側の窓は曲面ガラスとなっている。前照灯は窓下中央部に二灯配置、尾灯は上部にある方向幕の更に上に設けられている。側面の窓は扉窓・戸袋窓を除いて2段構成となり、開閉可能な細長い窓と、車体の1/3以上もの大きさになる非常に大型の窓が並んでいる。この前面や大型窓を始め、それまでの路面電車車両には見られない非常に斬新なデザインが特徴で、同形状の車両は同時期に製造された連接電車A820形や改良型連接電車のA830形にも引き継がれており、1960年代後半の札幌市電を代表するデザインとなった(このうちA830形は1966年にローレル賞を受賞している)。尚、塗装自体は既存車と同様モスグリーンとベージュのツートンカラーとなっている。扉配置は前・中扉配置となっており、混雑時の乗降を考慮し中扉は1400mmの両開き扉、前扉は2枚引き戸となっている。車内はロングシートで、両開き扉付近に車掌台を備える。尚、窓の設けられている部分には背ずりが取り付けられておらず、特徴的な大型窓もあり、背ずりは非常に低くなっている。D1040形は前述のとおり麻生〜新琴似駅前間延伸と共に運用を開始し、非電化区間から札幌市街方面の電化区間への直通運転にも用いられた。一般的に路面を走る鉄道は電車であることが大半で、この「路面気動車」は世界的にも珍しい存在であり、海外の雑誌で取り上げられたこともある。1967年の麻生変電所新設とそれに伴う鉄北線全線電化後もしばらく使用されたが、1971年の札幌駅〜北24条間の廃止に伴い運用を離れ、そのまま廃車された。鉄北線の全線電化後、一部の路面気動車は電車に改造されているが、こちらは製造からわずか7年でお役御免となってしまっている。非常に短命に終わってしまった車両ではあるが、このうちトップナンバーのD1041号車は札幌市交通資料館に静態保存され、「ヨーロピアン調」と謳われた外観と、稀有な「路面気動車」の面影を現在に残している。

 2014,06,28 札幌市交通資料館