10形
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 札幌市の路面電車は馬車鉄道からの転換により1918年以降順次開業していったが、当時は札幌電気軌道という民間会社が運営していた。同社が路面電車転換に際し最初に導入した車両がこの10形である。本車は新造車ではなく、名古屋市電の前身にあたる名古屋電気鉄道から車両譲渡を受けている。当初は新造車をイギリスから輸入のうえ導入する予定であったが、折しも北海道50周年を記念した博覧会に間に合わせるべく路面電車への転換を急いだ結果、本形式の導入に変更されたという逸話を持つ。導入元となったのは名古屋電気鉄道における開業時からの車両で、1898年から1907年にかけて製造されたものである。オープンデッキ、ダブルルーフ構造を有する全長7m級の木造2軸単車で、名古屋時代は運転台部分もオープン構造となっていた。譲渡に際しては屋根が運転台上部まで延長され、前面窓が新設された他、側面の袖絞りがなくなりストレート車体に改められる等の改造が施されている。車内はロングシートで、背ずりがなく座面のみ設けられていた。なお、本車の軌間は1067oであり、台車は軌間変更もなく譲渡された結果、札幌市電の軌間は現在に至るまで1067oとなっている。札幌には24両が譲渡され、10形という形式が振られた。黎明期の札幌の路面電車を支えた本形式は、1927年の市営化後も引き続き在籍したが、経年から1936年までに全車退役している。その後はササラ電車等の除雪車や散水車に改造された車両がある他、1両(29号車)が長期留置の後1951年以降円山動物園に譲渡され同地で静態保存された。この車両は1960年の札幌市電まつりに合わせて札幌市電に返却され、動態復元・車籍復帰がなされ再び本線走行が可能となり、時折イベント運転が行われた。復元に際し、車号が22号に改番されている。その後1977年からは車籍を有した状態で札幌市交通資料館に展示されたが、これにより本線走行の機会は皆無となり、時代が平成になってから再度除籍されている。長らく札幌市交通資料館で保存されていたが、元々名古屋で運行されていたことから、愛知県の博物館明治村50周年を記念して「里帰り展示」がなされることになり、一旦博物館明治村に移設のうえ、同地で展示されていた。元々明治村での展示は期間限定で、情勢等もあり期間延長などがされたものの、2024年に札幌市交通資料館がリニューアルオープンすることにあわせ、再度札幌に戻ることとなった。なお、リニューアルオープンした札幌市交通資料館では屋内展示となっている。

 2025,10,24 札幌市交通資料館


2025/10/27