ヨ10形
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 ヨ10形は1968年に配備された車掌車である。当時ヲキ100形の台頭によって勢力を縮小していた大正生まれの先代ホッパ車ヲキ1形を種車としており、同車の台枠・台車をそのまま再利用し、新製のデッキ付車掌室を載せた格好となっている。ヲキ1形が元々ボギー車であったこともあり、全長およそ7.5mの車掌車としては珍しくボギー車となっている。同車最大の特徴は、車掌室及び乗降用デッキを片側に寄せたことで、むき出しの台枠と併せたL字型のスタイルになっている点にある。東武鉄道のヨ101形等、中央に車掌室を寄せている車掌車は他に見受けられたものの、このようなL字型の車体を採用した車掌車は非常に珍しく、ボギー構造の緩急車であるという点もあって共にユニークな車両であると言えよう。尚、車両によって車掌室の設置位置は異なっており、三峰口方にある車両と羽生方にある車両の2種類が存在した。ヨ10形は全9両の陣容であり、いずれも東横車輌にて改造されている。同車は車掌車として貨物列車の最後尾を中心に連結され、貨物列車の中でも異彩を放つ存在となっていた。しかし1987年9月を以て車掌車の使用が全廃となったことで用途がなくなり、翌年3月までに全車廃車されている。現在はヨ15号車が三峰口の秩父鉄道車両公園に保存されており、その特異な外観を今に伝えている。

 2013,03,07 秩父鉄道車両公園


■Variation
 上写真と反対側を望む。車掌室のない部分は一見すると荷台にも見えるが、これは台枠がむき出しになっているだけであり、荷台と呼べるべき代物ではない。ヲキ1形の台枠は比較的細く、それ故新設された車掌室が台枠からはみ出している様子が分かる。このような構造の貨車は非常に珍しく、正に「珍車」ともいうべき存在と言えるだろう。尚、台枠の先端部には柵が新設されており、その部分には尾灯も取り付けられている。

 2013,03,07 秩父鉄道車両公園