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秩父鉄道では1988年より熊谷〜三峰口間でSL「パレオエクスプレス」を運転しているが、同列車の牽引機として使用されている機関車がC58形363号機である。C58形は1938年から1947年にかけて413両が製造されたテンダー式蒸気機関車で、このうち363機は1944年に川崎車輌で製造されており、当初は釜石機関区に配置された。以降も長町や郡山など、東北地方から離れるに各線で活躍し、1972年の新庄機関区を最後に国鉄からは廃車された。以降は埼玉県吹上町の吹上小学校の校庭にて静態保存されていたが、1988年に実施される「さいたま博」における目玉事業として秩父鉄道で蒸気運転を行うこととなり、引き続き静態保存されていた同機に白羽の矢が立ち、動態復元されることとなった。復元は1987年より行われたが、復元開始前に車籍復活がなされており、分割民営化直前の国鉄を経て民営化後はJR東日本に一旦車籍を有した。復元後の1987年12月に秩父鉄道に譲渡され、1988年2月よりSL「パレオエクスプレス」として営業運転に返り咲いた。当初は埼玉県北部観光振興財団が所有し秩父鉄道が管理する体裁をとっていたが、2000年に同財団は解散しており、一時的に埼玉県の所有となったのち、2003年より正式に秩父鉄道の所有となり現在に至っている。元々東北地方で使用されていた機関車のため、静態保存時までは前照灯は2灯配置であったが、動態復元に際して副灯は撤去されている。以来車両故障や脱線による運用離脱はあったものの、現在に至るまで30年近くに渡り使われ続けており、「都心から最も近い復活蒸機」としても高い人気を博している。なお、同機は復元後現在に至るまで種々の形態変更がなされており、復元当初にレタリングが装飾されたことに端を発し、除煙板やナンバープレートの変更も何度かなされている。なお、同機は秩父鉄道の車両ではあるが、JR線での営業運転実績もあり、D51形やC61形との重連運転も行ったことがある。ATS-Pなどの保安装置を搭載していないため現在は秩父鉄道以外で先頭に立つ機会はほぼ皆無に等しいが、車両検査は他のSLと同じく大宮車両センターで行われており、その際には現在でもJR線内でも姿を見ることができる。
2013,10,06 武 川 |