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2004年登場。バリアフリー対応に難のある10000形の置き換えと需要の落ち込んでいた箱根観光のテコ入れを図るべく製造された特急型車両である。一世代前の30000形が汎用性を目指したために展望室の設置や連接構造は廃したが、50000形では小田急の特急型車両としての特徴である連接構造の車体や前面の展望室を復活させており、最大の特徴となっている。車体のデザインはデザイナーの岡部憲明氏が手がけており、アルミ合金製の車体はシルキーホワイトをベースにバーミリオンのラインを入れており、側窓には4m級のロングガラスを取り入れている。前面は曲線を多用した流線型となり従来車に比べてシャープなデザインとなった。また一部車両を除き天井部分を高くし、大きく弧を描いた意匠となっている。50000形には「VSE」という愛称が付けられたが、これは天井の円弧「Vault」よりとられており同車の特徴の一つである。制御方式はIGBT-VVVFインバーター制御方式で、小田急では初めて全密閉型の主電動機が採用され走行音の静粛性が図られている。また、車体傾斜装置や台車操舵制御を小田急で初めて採用されており、曲線通過時における高速化や快適性の向上が図られている。尚、7000形や10000形は11両を組んでいたが、こちらは左右対称となるよう設計されたことから10両編成とされた。車内は木目調及びオレンジ色のモケット、電球色のLED灯で温かみのある内装となっており、リクライニングシートのシートピッチは最低でも1050mmと、10000形に比べて格段に向上している。尚、通常の座席は窓側に5度傾いており眺望に配慮されている。更に車端部鴨居部にはLCDが取り付けられ、次駅案内の他観光案内等も行われている。この他この車両の売りである展望室を始め、4人用区画であるサルーンシートなどグループ利用を念頭に置いた内装となっている。またカフェカウンターやシートデリバリーサービス等、従来の「走る喫茶室」を復活させた点も特徴である。50000形は第1編成の甲種輸送時は概要が分からないようフルラッピングで輸送されており、お披露目時にスモークと共に姿を現すなどセンセーショナルなデビューを飾った。また小田急にとって展望車のついた観光特化型の特急型車両は久々の登場であり、登場時は鉄道ファンでなくとも大きな話題となっている。原点回帰とも言える同車は大きく評価され、20000形以来となるブルーリボン賞を2006年に受賞している。同車より後に製造された60000形がJR・地下鉄直通と広範に使用されるのに対し、こちらは基本的に箱根特急の運用に特化されており、箱根特急のフラッグシップとして活躍している。2016年からは江ノ島線での定期運用にも充当される等活躍場所を増やしたが、2022年3月を以て定期運用を離脱し、2023年には現役を引退する予定となった。
2007,09,22 千歳船橋 |