 |
頸城鉄道において2号という機関車は2種類あり、初代は開業当時に導入された5t級の蒸気機関車で、出力不足であったためか早々に置き換えられている。2代目はこの5t機を置き換える目的で1915年に導入した9t級のC型タンク蒸気機関車である。元は1911年にドイツのコッペル社で製造されたもので、土木業者であった大丸組が品川沖の埋め立てに伴う国鉄大井工場の敷地造成用に購入している。造成工事の完了した1915年に余剰となり、一度流山鉄道（現在の流鉄）に籍を移した後頸城鉄道に譲渡されている。導入当初は3号機関車という名前であったが、1918年に前述の初代2号機関車が売却されると本機が2号機関車を踏襲することになった。シリンダーに送り込む蒸気を制御する弁装置は、アラン式と称される比較的採用例の少ない弁装置が採用されている。本機は頸城鉄道の機関車の中でも安定した性能を有し、戦後に他の蒸気機関車がディーゼル機関車の種車となって以降もほぼそのままの形態でとディーゼル機関車と共に客貨輸送に使用された。その後十勝鉄道から新たなディーゼル機関車を導入することで無煙化することとなり、結果1966年の特別運転を最後に惜しまれつつ廃車されている。出自となる大丸組における同型機は5両存在したが、本機は唯一戦後まで生き延び、55年もの長きにわたり使用されるという軽便鉄道の機関車の中でも極めて長命な車両となった。廃車後は百間町の頸城鉄道自動車本社に保存されたが、1972年に鉄道開業100年を記念し蒸気機関車の運転を行うことになった西武鉄道に貸与され、再び動態となり本線上を走行することとなった。西武鉄道では当時軽便鉄道であった山口線のSL列車として使用され、「謙信号」という愛称がつけられた。その後1977年に後継の蒸気機関車（台湾製）が入線すると頚城自動車に返却され、以降は長い間旧百間町の車庫跡に静態保存されていた。長らく日の目を見ず保管されていたが、2001年からは再び整備が開始され、DB92の動態復元以降は無火状態ながら構内を走行するようになっている。なお、2013年には上越市の登録有形文化財に指定された。 2013,10,20 百間町車庫（くびき野レールパーク） |