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南海電鉄が運営する鋼索線は、高野線の終着駅極楽橋から山上の高野山駅まで凡そ0.85km、高低差364mを5分で結んでいる。最急勾配は562.8‰(高野山駅付近)あり、鉄道事業法に基づく鋼索線の中では全国でも3番目に勾配が急な路線となっている。麓側の極楽橋駅周辺は殆ど何もないが、山上の高野山駅は宗教都市かつ世界遺産である高野町中心部への玄関口として位置づけられており、一般的なケーブルカーとは逆の様相を呈する。この鋼索線は当時の高野山電気鉄道によって1930年に開通し、既に開通していた鉄道線とあわせ、大阪等と高野山をアクセスするルートに組み込まれた。宗教都市である高野へのアクセスの他、高野町の住民の生活の足としての機能もあったことから、戦中期に軒並みケーブルカーが休止・廃止に追い込まれた時期であっても運休しなかった稀有なケーブルカーである。1947年に現在の南海電鉄による運営となり、現在に至っている。現在までに3度車両交代がなされており、現行の車両は4代目にあたる。
4代目の車両は先代車両の老朽化に伴い2018年にスイスCWAで製造された。先代車両と同様のアルミ製の2両連結車体を有し、前面はCWA製の他のケーブルカーにもみられるように流線形状となっている。先代車両と比べて山麓側(N20形)、山上側(N10形)のデザインは類似しているが、前照灯・尾灯の配置箇所が異なっている。なお、前照灯・尾灯はいずれもLED灯が採用されている。外装は根本大塔をイメージした朱色を基調とし、正面、側面とも窓周辺は黒く配色されている。窓ガラスは先代車両に比べて大型化され、また前面は大型曲面ガラスになったこともあり、眺望性の向上がなされている。集電装置はシングルアームパンタグラフで、先代車両と異なり1基配置となった。なお、車両入れ替えに伴う架線撤去は行われておらず、全線に渡りサービス電源を集電装置から給電する。車内は全体的に茶系でまとめられており、連結部壁面や窓下の壁面は木目調となっている。座席のモケットは金茶色で折り畳み可能な構造となり、座席の背もたれ部分は木材を用いて格子状になっている。側扉は両開き900oで、開口部は先代車両と比べて150o拡大し、電動車いす利用者でも乗降可能となっている。なお、扉鴨居部・妻部に設置された車内案内表示器及び案内情報の設定器については、製造時期が新しいこともあり先代車両から流用されている。このN10・20形は、2019年3月から営業運転を開始した。なお、この車両入れ替えに伴い、巻上機も更新されている。
2019,10,05 高野山 |