1050形
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 1050形は1976年に導入された車両である。元は1948年以降に製造された仙台市交通局100形(登場当初は80形)で、24両の陣容であった中でも1952年製造の後期型車両5両が譲渡対象となっている。仙台市電100形は仙台市交通局では初の大型ボギー車であり、製造当初は全車とも前後扉配置、前面も3枚扉という一般的な路面電車と同じスタイルを有していた。1965年に一部車両を除いてワンマン化改造が行われたが、この改造の際に前面窓が左右非対称となり、他の車両には見られない独特なデザインとなっている。合わせて側扉は前中扉配置となり、集電装置はZ型パンタグラフとなっている(集電装置は製造当初はポール、後にビューゲルを経ている)。仙台市電は1976年に全廃となっているが、前述のとおり5両が長崎電気軌道に譲渡され、再起することとなった。長崎では1000番台の形式の車両は当時在籍していなかったが、「せんだいから昭和50年代に来た車両」という語呂もあり、1050形という形式がつけられたとされている。仙台市電は1067o、長崎電気軌道は1435oと軌間が異なることから、譲渡に際しては台車を西鉄の発生品に交換している。元々ワンマン化改造を受けていたことから車体へは大規模な改造はなされていないが、車内については座席が従来のモケット張りからビニールレザーに張り替えられている他、壁や袖仕切りは白系から緑系の色に改められている。また車体の塗装は長崎電気軌道標準の緑と白のツートンカラーとなり、ワンマンカーの識別のため前面には赤帯が配された。その後1985年には開業70周年を記念し1051号車が仙台市電当時の塗装に復元されている。1990年から廃車が始まり、2000年までに4両が廃車されたが、解体は1両のみで他は何らかの形で現存しており、特に2000年に廃車された1053号車は仙台に移送、仙台市電当時の姿に復元の上秋保温泉で静態保存され、1054号車は1990年の廃車後オーストラリアに譲渡され、集電装置をポールに換装の上でシドニー・トラムウェイ・ミュージアムで動態保存されている。今もなお現存している1051号車は、他の譲渡車両と同じく動態保存車としての一面が強く、また冷房装置が現在まで取り付けられていないことから、基本的にはイベント時等の運用が中心となっているが、ICカードリーダーは設置されているため、通常の運行に就くことも可能となっている。日本国内においては稼働状態にある唯一の旧仙台市電であり、他の車両と同じく貴重な存在である。しかし動態保存の維持が困難となったことから2019年3月末を以て引退することとなった。除籍後は埼玉県の西武園ゆうえんちに保存されることとなり、かつての都電と同色に塗り替えられたうえで同地で静態保存されている。同車は同遊園地が昭和レトロをテーマに大規模リニューアルされた2021年5月より一般公開されている。

 2016,11,13 若葉町


■Variation
 引退後、遠く埼玉は西武園ゆうえんち駅前に保存された1051号車。西武園ゆうえんち全面リニューアルにより「昭和レトロ」を全面に押し出したことに伴い、当時の面影を残す路面電車車両をエントランス部に展示することで、遊園地内部の「商店街」と併せて昭和30年代の情景を表現している。譲渡に際しては当時の「都電」カラーに塗り替えられているが、同形式の現役時代は当然ながらこの塗装を纏うことはなく、そもそも関東地方に縁がない車両であった。

 2022,05,09 西武園ゆうえんち
2022/05/09