ケーブルカー
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 丹後海陸交通は「丹海バス」の愛称で知られるバス事業や天橋立観光船を始め、京都府北部で交通網を構築しているが、日本三景の一つである天橋立では「股のぞき」や「かわらけ投げ」で知られる傘松公園や更に上部にある成相寺へのアクセス等を目的に鋼索線の営業を行っている。元は1927年に成相電気鉄道の手により開業した路線で、1944年の不要不急線指定に伴う廃線を経て1951年に現在の丹後海陸交通により復旧し、営業運転を再開している。この復旧に際しては愛宕山鉄道鋼索線(1944年廃止、再建されず)から発生した、スイスはギーセライベルン製の楔形レールが用いられている。このレールはかつて御岳登山鉄道でも使用されていたが、現在は日本国内ではこの天橋立鋼索線でのみ使用されている貴重なものである。制動装置も他の鋼索線で一般的なテオドルベル式ではなく、車両の回転軸をバネに伝達させ、それにより制動子が線路の両側を掴んで制動が作動するという、所謂「ギーセライベルン式」が採用されている(他には箱根登山ケーブルや2005年に廃止された屋島登山鉄道等でも採用されている)。麓側(海側)の府中駅と山側の傘松駅の間は0.4kmと比較的短く(両駅間の高低差は115mある)、また府中駅構内の最緩勾配は78‰と鋼索線の中では最も緩やかである。

 現在使用されている車両は1975年にアルナ工機で製造された全鋼製車両で、丹後海陸交通の車両としては二代目にあたる。車長は8mに満たず、鉄道事業法に基づく鋼索鉄道の旅客車両としては全国で最も短い。前面は2枚窓を有しいずれも開閉可能となっているが、これ以外に通風孔を2つ備えている。側窓はHゴムで支えられた明かり取り用の窓と比較的大型の側窓に分かれるが、このうち後者は上下可動式となっており、晴天時等はさながらトロッコ車両のように窓を開放して走行することができる。車内は一般的なケーブルカーと同じくクロスシートだが、天井の蛍光灯は珍しく丸型のものが採用されている。尚、集電装置は菱形で、海側に1基を備える。同車の塗装は2度塗り替えられており、登場時はクリーム色とバーミリオンのツートンカラー、1991年から2015年までは黄色を基調とした塗装を纏っていたが、京都府が実施している「海の京都」事業にあわせ、2015年には実に24年ぶりに塗り替えがなされ、現在は海側がアイボリー、山側が深緑を基調としたものに塗り替えられており、前後ではその印象が大きく変わっている。因みにこの塗り替えにあわせ、並行するリフトも塗り替えがなされている。

 2015,05,05 府 中


■Variation
 山側からのぞむ。2015年の塗り替えにあわせ、山側半分は天橋立の松林をイメージした深緑色をベースに塗装されている。

 2015,05,05 傘 松