8200形
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 1982年登場。車両冷房等の取り組みで乗降客が増加し、恒久存続が決まった熊本市電において、老朽化した車両の体質改善が急務となっていた。この背景のもと、1350形以来22年ぶりに新造車両を投入することとなり、製造された車両が8200形であり、2両が日本車輌で製造された。それぞれ公募で「しらかわ」「火の国」という愛称が付けられている。形式の8200形は19「82」年に製造されたことに由来しており、以降の新造車両も同車の付番が受け継がれることとなった。既に広島や長崎に導入されていた所謂「軽快電車」に準じた全金属製の車体となり、やや傾斜した前面や大型ガラスを採用し、左右のガラスと一体的に見せるようにしたデザイン等、従来の車両とは大幅にイメージチェンジした車両デザインや白と緑を基調とした新塗装を採用する等、外観のみでも熊本市電の新時代を築いた車両であることがいえる。しかし同車の最たる特徴は、日本で初めて営業用の車両でVVVFインバーター制御方式を採用した点にある。回生制動を併用することができ、また電動機の中でも保守性に優れるかご型三相誘導電動機を可変速駆動することが可能なこの制御方式の採用により、更なる省エネ化を実現させただけでなく保守性の向上やランニングコストの削減、機器類の小型化等のメリットを生み出している。因みに熊本市電の架線電圧は600Vであり、誘導障害の要因でもある軌道短絡がなかったことも導入を後押しした理由であると言える。尚、電動機駆動用の素子には後に主流となるGTOではなく、逆導通サイリスタが採用されている他、駆動方式には直角カルダン駆動方式が導入されている。8200形では120kwという路面電車車両としては出力の大きい電動機を搭載したため片側は付随台車となっており、8201号車と8202号車でその位置が異なっている。また、路面電車車両としては珍しく2両をつなげた連結運転にも対応しているものの、現在に至るまで営業運転では実現されていない。車内はロングシートと1人掛けの転換クロスシートを組み合わせたセミクロスシートが採用されており、サービスレベルも従来車に比べて向上している。8200形は2両のみの陣容であり、当時はインバーター機器類が高価であったことから次の新造車は機器流用の8500形となっている。しかしその後の新造車は全てVVVFインバーター制御車両となっており、その礎を築いたと共に日本の鉄道史にも色濃く残る車両であることは確実である。これにより、1983年にはローレル賞を受賞している。前述の通り日本の鉄道史に色濃く残る8200形は2006年以降に制御装置の経年劣化に伴い換装が行われており、以降はIGBT-VVVFインバーター制御方式となった。2両とも機器換装が行われている。これにより現在も廃車はなく、他車に混じり主力車両の一つとして活躍している。

 2013,03,18 市立体育館前