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5000形は、混雑が慢性化していたラッシュ時輸送の改善を目的に1976年に導入された連接車両である。元は西鉄福岡市内線で使用されていた1000形で、4編成が1979年までに導入されている。西鉄1000形は2車体3台車の連接構造を持つ車両で、製造時期により車体構造や駆動方式に差異が生じていたが、熊本市交通局に譲渡された車両はいずれも全鋼製かつ中空軸平行カルダン駆動を採用していた高性能車となっている。熊本市交通局へは、走行機器類はそのままの形で譲渡されており、カルダン駆動の車両の導入は熊本市電でも初の事例となった。内装はワンマン運転車と同様の機器類が追設されているが、本車は連接車であることから基本は車掌乗務のツーマン運転で、中扉付近に車掌台を備えている。なお、座席配置はオールロングシートである。譲渡当時は非冷房であったが、1980年には早くも全編成冷房化されており、車内サービス向上に寄与した。運用開始当初よりラッシュ時を中心とした多客時の輸送に特化しており、イベントのない日中時間帯は基本的に運用から外れていた。なお、本形式の外装は編成及び時期ごとに変遷しており、最新鋭の9700形に準じた塗装になった編成も存在した。なお、現在も残る5014編成は2002年から西鉄時代と同様の塗装に復元されている。1990年代までは4編成とも在籍していたが、1997年の9700形導入時に1編成が廃車され、次いで0800形の増備で2009年に2編成が廃車されたことで残る編成は5014編成1本のみとなった。同編成も長期間運用離脱していた時期があったが、輸送力増強の目的で2016年に大規模な修繕工事が施工され、2017年3月に運用に復帰した。運用復帰後も限定運用が組まれており、特に現在の定期運用は平日朝のピーク時に上熊本〜健軍町間を1往復するのみとなっている。VVVFインバーター制御車両より前の路面電車における高性能車はそもそも例が少なく、現存車両も非常に少ないことから、限定運用とはいえ日常的に運用に入る同形式は非常に貴重な存在である。
2023,09,25 上熊本 |