MT-4000形
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 2016年の熊本地震以降、長らく立野〜中松間で運転を見合わせていた南阿蘇鉄道では、同区間の再開にあたりJR豊肥本線に直通する列車の設定が企図された。この目的に加え、既存車両の更新とインバウンド増加に伴う外国人観光客の受け入れ環境整備を目的として2022年以降に製造された車両がMT-4000形で、ゆうすげ号を除く一般車両としてはMT-3010号車以来実に24年ぶりの新型車両となった。新潟トランシス製の全長18m級のディーゼルカーで、その形状は京都丹後鉄道のKTR300形等に酷似している。外装は白を基調としているが、増備時期によってデザインが変わっており、初期に導入された2両は白川などの水をイメージした濃淡ブルーの波型模様と阿蘇五岳をイメージした濃淡グリーンの波型模様があしらわれている。後年に導入された2両は上部が黒色となり、赤色で力強く「n」の字があしらわれたデザインとなっている。営業最高時速は95km/hだが、機関出力は350PSに増大した他、電気指令式ブレーキの採用及びブレーキ回路に冗長性を持たせることにより保安度が向上している。これにより既存車両とは併結が不可能となっている。前述のとおりJR九州への直通を主眼に置いていることから、保安装置にはATS-Snに加えてATS-DKを搭載している。車内はオールロングシートとなっている。壁面を木目調としている他、座席モケット、床材ともあえてグレー系の明度の低いものを取り入れることで、「外の景色を引き立たせる」ように工夫されている。車椅子スペースを備えた他車内にスロープを備え付けたためバリアフリーにも寄与した。南阿蘇鉄道では初めて半自動扉開閉機構を備え、ドア付近に押しボタンが設置されている。更に、 GPSと連動したデジタル運転制御システムの導入により、車内放送等を完全自動で行えるようになっている。なお、運行距離が短いためトイレは設置されていない。MT-4000形は2両が2022年に導入され、全線復旧に先立つ形で2023年4月から営業運転を開始した。同年7月の南阿蘇鉄道全線復旧時からJR豊肥本線への直通が朝2往復ながら開始され、肥後大津まで乗り入れるようになった。なお、導入当時は全線復旧していなかったことから、メーカーの新潟トランシスから海上輸送と陸送を併用する形で高森駅構内に搬入された。次いで既存車の置き換えを目的に2024年にも2両が導入され(こちらは復旧後の導入となったことから通常どおり甲種輸送)、現在は4両体制となり南阿蘇鉄道では最も両数の多い車両となった。

 2023,09,24 高 森


2025/11/03