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1986年に国鉄高森線から転換されて営業を開始した南阿蘇鉄道は、開業初年から観光客の取り込みを目的にトロッコ列車の運転を行うこととなった。これにより、客車として導入された車両がこのトラ700形で、国鉄で余剰となっていた2軸無蓋車のトラ70000形に各種改造を施し旅客車両に改めている。南阿蘇鉄道に導入された車両はいずれも1967年に製造されたものである。種車のあおり戸を一部撤去の上乗降扉を設けた他、トラ700形同士の連結面は貫通扉が設けられ、通り抜けが可能なよう改められた。また側面に柱及び転落防止用柵が新設され、難燃布材を用いた屋根が上部に貼られており、屋根にカンテラ調の灯具がつけられるという、この時期に他の鉄道路線でも見られた貨車改造のトロッコ車両としての典型的なスタイルを有していた。車内はテーブル、座席が設置されている。導入当初は種車と同じ黒を基調とし、あおり戸に白線が入れられた外観であったが、1990年代中期に赤を基調に、あおり戸に青系の帯が配された姿に改められて印象が変わった。その後、2007年に大規模なリニューアルが施されたが、その際に側板が更新されており、貫通路のない側の妻面には新たに妻窓が追設され、側面上部には本リニューアルに併せて新造されたTORA200形と同じく日よけが新設されている。塗装もTORA200形と同じく青地を基調とし、あおり戸の上部が金色のラインが配されたものに変わっている他、座席もTORA200形と同じものに換装されている。更に側柱が強化され、側扉が自動扉(TORA200形と同じ折り戸)となっている。種車の製造から既に60年近く経過し、第3セクター鉄道の車両としては非常に長命な車両となっているが、熊本地震を乗り越えて今もなおトロッコ車両として第一線での活躍が続く。
2013,03,17 高 森 |