8A系
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 2024年登場。それまで近鉄の一般車両は2000年代にシリーズ21が投入されて以来新造車両が投入されず、1960年代から1970年代に製造された車両が2020年代になっても残存し、老朽化が進行していた。8A系はそれら在来車両の置き換え及び体質改善を目的に開発された通勤型車両の第1陣で、京都・奈良線系統向けの車両である。近鉄の一般型車両としては、2002年の6820系以来実に22年ぶりの新形式となった。本形式から、投入線区や用途、内装等に応じ、英数字を組み合わせた付番方法がとられている他、編成を現す電算番号も形式からとるようになった。本形式製造にあたっては、外装デザインはGKインドストリアルデザイン、内装デザインはイチバンセンが担当している。車体はアルミ合金製のダブルスキン構造で、従来の京都・奈良線系統の車両と異なり袖は絞られていない。前頭部は八角形に近い斬新な形状となり、加えて他形式を含めた併結を考慮し前面中央は幌付き貫通扉が取り付けられている。前照灯、尾灯、標識灯は特徴的な八角形の形状に併せて配置されている。種別・行き先表示器はフルカラーLEDとなり、前面・側面とも既存車に比べて大型化している。特に側面表示器においては「ひらがな」でも表示するようになった。外装はシリーズ21以前の近鉄一般車両に近いマルーンレッドとシルキーホワイトのツートンカラーとなったが、既存車両とは塗り分けが異なる他、より艶やかな色合いとなり、「近鉄らしさ」を残した新型車両であることを具現化している。制御装置は80000系に続きハイブリッドSiC-VVVFインバーターが採用されている。制動は純電気ブレーキとなり、停止直前まで回生が作動するようになっている他、連続急勾配に対応し抑速ブレーキも備えている。主電動機も80000系と同様全閉式のかご型三相誘導電動機となり静粛性、メンテナンス性の向上と低損失化が図られた。本系列も既存形式との併結を前提としているため、制動は電気指令式ブレーキではあるが、電磁直通ブレーキの車両とも併結を可能としている。台車はボルスタレス台車で、80000系で採用されたものをベースに一般型車両向けの仕様としている。運転台は既存車両と同様のツーハンドルマスコンだが、近鉄の車両としては初めてグラスコクピットが採用されている。車内は車端部がロングシート、扉間がロングシートと回転クロスシートの可変座席であるデュアルシートという所謂「L/Cカー」となっている。既存のL/Cカーが編成単位でないとロングシート・クロスシートを切り替えられなかったのに対し、こちらは区画ごとに切り替えが可能であり、1両の中でロングシートとクロスシートを混在させることが可能となっている。座席幅は既存車に比べて1席あたり10o拡大した。更にこれまでの車両に見られない設備として、中央扉付近に各車2か所設置された大型1人用座席「やさしば」があり、進行方向と通路方向のいずれにも着座可能となっている他、付近にストッパーが設けられ、キャリーケースやベビーカーを置きながら着座することが可能となっている。空調装置は冷房能力を向上させただけでなく、内部に深紫外線LEDを組み込むことで空気を清浄できるようになっている。近年の通勤型車両のA更新車と同じく、扉鴨居部の液晶表示器は42インチサイズの大型のものが千鳥配置されている他、扉鴨居部には防犯カメラも備えている。また、各扉には半自動開閉用の押しボタンが鋼索線以外の一般新造車では初めて採用されている。8A系は第1陣が2024年10月から営業運転を開始している。現在のところ全編成とも4両で1編成を組み全て西大寺に配置されており、8000系列を置き換えつつ奈良線・京都線系統に充当されている。なお、阪神線や京都市営地下鉄には乗り入れない。

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2024/10/30