コ7形
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 近鉄の保有する鋼索線の1つである西信貴鋼索線は、信貴線の終点信貴山口を起点に頂部の高安山までの凡そ1.3q、高低差354mを結ぶ鋼索線であり、信貴山口から高安山までを凡そ7分で結ぶ。信貴山に位置する、信貴山天台宗総本山の朝護孫子寺への大阪側からのアクセスを目的に建設された路線で、1930年に信貴山電鉄(後に信貴山急行電鉄に改称)の路線として開業した。当時は終点の高安山から朝護孫子寺に近い信貴山門までを結ぶ山上鉄道に接続し(鋼索線と同時開業)、大阪〜信貴山のアクセスルートとして機能した。当時の車両は定員が100人と、戦前の鋼索線の車両としては最大級の車両を擁していたが、太平洋戦争に際しては他の鋼索線と同様に資材を供出することとなり、1944年に鋼索線・山上鉄道とも路線休止となった。その後信貴山急行電鉄は関西急行鉄道へ合併され、更に同年6月には近畿日本鉄道に統合。1957年の路線再開の際は近鉄の路線としての再開となった。この際に山上鉄道は正式に廃止されており、高安山から信貴山門までは、新設されたバス路線に乗り換えて向かうこととなった。長らくの間スルッとKANSAIなどのプリペイドカードには対応していなかったが、2015年にはIC乗車券に対応している。

 現在使用されているコ7形は1957年の路線再開に合わせて日立製作所で2両(コ7、コ8)が製造されたもので、傍系の近畿車輌で製造されることの多い近鉄の車両としては珍しい他社製の車両である。コ7には「ずいうん」、コ8には「しょううん」という愛称がつけられている。全長13.8mの普通鋼製で、1両運転のケーブルカーでは大型の部類に入る。側扉は3か所設けられているが、いずれも外吊り式の自動扉となっている。前面のデザインは向きにより異なっており、具体的には頂側の前照灯・尾灯が窓上にあるのに対し、麓側は前照灯・尾灯とも窓下に設けられており、更に天窓を有している。集電装置は菱形パンタグラフで、車両の上下に計2か所設けられているが、何れも麓側から見て左側に寄っており、故に架線も同じ位置に通されている。車内は全て固定クロスシートとなっており、この点は他のケーブルカーとほぼ同じだが、このコ7形は眺望性向上のため、麓側の一部の天井が天窓構造となっている点が特徴である。同様の理由で、中扉より下にあるクロスシートは全て下を向く形になっている(上側は通常のボックス席である)。コ7形は登場から既に60年近くが経過しているが、現在もなお信貴山へのアクセス手段として活躍が続いている。なお、塗装は数度変更されているが、2009年から2021年までは山吹色をベースに信貴山のキャラクターである「しぎとらくん」が描かれたものになっていた。2021年の改修に際しては再度塗りなおされており、現在は登場当時纏っていた塗装に復元されている。

 2014,04,29 信貴山口


■Variation
 高安山方は前照灯・尾灯が窓上にあるためこちら側には天窓は設けられていない。なお、西信貴鋼索線では山頂への水等の物資運搬用に、コニ7形貨車を連結することがあるが、その際はこちら側に連結する。

 2014,04,29 高安山
 2021年の車体補修工事後、登場時の塗装に復元されたコ7形。この塗装は落成から1987年までの30年間纏っていたもので、それ以来の復元となった。なお、側面には虎のイラストが配されており、その点は往時とは異なっている。コ7号車「ずいうん」はクリームと赤色の2色塗装である。

 2022,07,13 信貴山口
 コ8号車「しょううん」は、クリームと青色の2色塗装となっている。

 2022,07,13 信貴山口
 コ8号車を高安山側からのぞむ。こちら側は前照灯回りも青く塗装されている(コ7号車の場合は赤く塗装されている)。

 2022,07,13 高安山
2022/07/18