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2013年登場。同年の伊勢神宮式年遷宮に併せ、単なる移動手段ではなく「乗ること自体を目的とする」ことをテーマに数年をかけて開発された、近鉄の一大観光拠点である伊勢志摩地域への輸送に特化した特急型車両であり、「しまかぜ」の愛称を有す。車体は既存の特急型車両と同じく普通鋼製だが、前面は他の特急型車両とは異なり、6枚のガラスを使用した多面体の形状となっており、精悍な印象となっている。塗装はクリスタルホワイトとファインブルーを基調に、スカイブルーとゴールドの帯があしらわれたもので、塗装パターンは1両ごとに異なるが、編成全体では調和のとれたデザインとなった。制御方式はIGBT-VVVFインバーター制御方式で、車両性能は21020系や22600系に準じているが、同形式のみの特徴として全車にフルアクティブサスペンションを備えた。当時は新幹線以外では初の事例である。客室はプレミアムシート、個室/サロン、カフェテリアと大きく3種類に分けられている。プレミアムシートは本革シート3列配置、シートピッチ1250oというデラックスカー仕様であり、電動レッグレストを備える他鉄道車両としては初めて背ずりにエアクッションを設置した。なお、両先頭車はハイデッキ構造となっている。中間のモ50300形は中央にデッキを備え、賢島方に和風個室と洋風個室を各1室、反対側に6人掛けのコンパートメント風サロン席を3室配している。サ50400形は定員外のカフェテリアで、10000系より続く2階建て構造を採用した。階上・階下とも席は伊勢湾側を向いており、反対側は通り抜け用の通路となった。カフェテリアのうち階下席は戸を閉め切りグループ利用の個室とすることも可能となっている。近鉄で供食スペースを持つ特急型車両は「スナックカー」以来となるが、この点も近鉄特急の伝統を受け継いだものといえる。このように汎用特急車を大幅に凌駕する設備を有するため、同形式を用いた特急は、特急券と別に「特別車両券」が必要となる。50000系は当初6連2本が落成し、同年3月より大阪難波・名古屋〜賢島間を各1日1往復する特急「しまかぜ」として営業運転を開始した。「しまかぜ」は好評を博し、翌2014年にはマイナーチェンジが施された増備車1本が追加で落成し、これにより6連3本の陣容となった。あわせて同年10月より京都〜賢島間の系統も新設され、各々週1回の運休日はあるが3系統の運転となった。基本的に「しまかぜ」にのみ使用されるが、50000系は伊勢志摩特急の新たなフラッグシップであり、それ故伊勢神宮や橿原神宮に向けたお召し列車にも充当されている。なお、近鉄特急の特徴を存分に引き出したうえで対伊勢志摩に全面的に特化し地域振興に寄与した点が評価され、2014年のブルーリボン賞を受賞している。
2018,10,26 宇治山田 |