20000系
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 1990年登場。近鉄では従来団体輸送にオール2階建て車両の20100系「あおぞら」を使用していたが、老朽化、接客設備の陳腐化等により1989年には殆どの編成が引退し、以降の団体輸送は18200系を改造した「あおぞらU」や5200系列により行われていた。本形式は、20100系の特徴である2階建て構造を引き継ぎ、多様な団体輸送ニーズに対応する目的で、当初より団体輸送に用いることを前提に製造された車両であり、「楽」という愛称がつけられた。本形式は4両で1編成を組み、制御車にダブルデッカー構造、中間電動車にハイデッカー構造を採用しているが、車体高さは4両とも揃えられ、充分な車内空間を確保するため、車高4150oと車両限界ぎりぎりの高さとなった。前面は車両の高さもあり細長い印象を受けるが、大型の曲面ガラスを用いた丸みのあるデザインとなっている。前照灯は上部に設けられており、窓下に標識灯兼尾灯を備える。この尾灯は26000系等で採用されたものと同型だが、こちらは縦に配置されているため印象は大きく異なる。排障器には補助灯として、鉄道車両には珍しいリトラクタブル式のライトが取りつけられている。車体色はイエローとオフホワイトを基調に塗り分け部にグレーの帯を巻いている他、側扉部分はオレンジ、車端部は淡いグレーとしている。側窓の上端は全車とも共通で、いずれも曲面ガラスが採用されている他、乗務員室背後の側窓については台形状となった。団体専用車両としては珍しく側扉は両開き扉が採用されている。制御方式は既存の特急型車両と同様の抵抗制御方式、制動方式も抑速ブレーキを備えた電磁直通ブレーキであり、機器構成や台車等についてはアーバンライナー用の21000系に準じている。これにより、最高速度120km/hでの運転も可能となっている。本形式は基本的に単独走行となるが、他形式との併結走行も考慮されており、前面が貫通構造となっている他、電気連結器を備えている(実際2013年にはこれらを活用し、15200系を併結した8連での走行実績もある)。車内は転換クロスシートを基調としているが、運転席背後の展望席部分については階段状に座席が設置されていることから固定クロスシートとなっている。また、制御車の連結面側には6人掛けのサロンコーナーが設けられている。階下席を除いて各座席には「T-bar」と称される簡易椅子が設置されており、左右の「T-bar」を通路側に引き出すことで、補助席として機能する。なお、制御車にある階下席は機器構成の都合上客室部分は着席定員14名と小さいが、前後に階段が設けられており、行き止まり構造とはなっていない。この20000系は1990年11月より営業運転を開始した。元々18200系改造の「あおぞらU」が一定数在籍している状態であったため本系列の増備はなされず、現在まで4両1編成のみの陣容となっている。所属は高安検車区であるが、標準軌線区であれば信貴線等の4両編成が入線不可能の区間を除き基本的に入線可能であり、地区を問わず団体輸送を中心に充当されている。なお、本形式は2020年に大規模なリニューアルが施工されており、印象が大きく変わっている。

 2019,05,05 宇治山田


■Variation
 リニューアルが施された20000系。それまでの塗装から一変し「漆メタリック」と称される色を基調とした姿に改められおり、ロゴマークも刷新された。前照灯及び上部標識灯はLED化された他、特徴的だった排障器部分のリトラクタブルライトは撤去され、尾灯も備えた汎用品に換装されている。基本的な内装は転換クロスシートのままだが、座席形状自体が変更されている他モケットや床材、照明色等も刷新され、それまでのイメージとは大きく変わっている。特に中間車はシートピッチが910oから1210oへと大幅に拡大された。なお、「T-bar」は廃止されている。前頭部の展望席は階段状であったものを改めてフラットな形状とし、「楽VISTAスポット」と称するフリースペースとなった。1・4号車の階下部分も全てフリースペースとなった他、車端部のサロン席は4人掛けボックスシートと荷物置き場に改められた。またバリアフリーにも対応し、4号車は側扉は拡大された他、3号車のサニタリースペースも車椅子対応となっている。これらのリニューアルにより、定員は以前に比べ100人程度減少した。リニューアル後の20000系は2020年8月から営業運転を開始し、引き続き基本的には団体臨時列車に用いられている。

 2024,10,19 五位堂
2024/10/28