1000形
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 1000形は1979年に登場した、当時の江ノ島鎌倉観光として実に48年ぶりとなる完全新造車両である。当時ドラマの舞台になったこと等で脚光を浴びつつある中での新造車であり、製造を担当した東急車輌とは1年以上デザインの検討が行われた。それにより、清新さを持たせつつも「江ノ電らしさの維持」や「古都鎌倉との調和」に重きが置かれたものなった。車体は2両連接車体で、江ノ電の車両では初めて全鋼製となった。前面は3面折り妻状となっており、上部に電動の行き先表示器を備えるが、それを内包する程の大型ガラスを中央に1枚、左右に1枚ずつ廃している。ガラス窓は黒い桟で仕切られており、一体化して見えるようにデザインされている。前照灯・尾灯は腰部に設置されており、その部分は窪まれている。側窓は幅1050mm、高さ850mmのバランサー付き大型窓(戸袋窓のみ固定窓)で、内窓の窓枠は、同じく東急車輌が先んじて手掛けた京急800形と同じくFRP製となった。塗装は江ノ電のイメージでもある緑色を継承した一方、既存の塗色にとらわれず、クリーム色をベースとして窓下に抹茶色に近い緑色のラインを2本配したものとなった。駆動方式は従来からの釣り掛け駆動方式が採用されたが、これは急曲線の通過に対応して同一台車における車軸間距離の短縮を図るべく止む無く採用されたもので、制動方式には電気指令式ブレーキが採用された他、主幹制御器は中小私鉄には珍しい右手操作式のワンハンドルマスコンハンドルが採用される(これも京急800形の影響が強く、運転台が中央配置である点を除けばコンソールは類似している)など、種々の新機軸を搭載した。なお、前述の車軸間距離の短縮を図るため、主電動機は動輪の外側に取り付けられている。車内はオールロングシートで、白い化粧板にFRP製の白い窓枠、赤色の座席モケットなど、外装と変わって暖色系の内装となった。なお、側窓は当時としては珍しく熱線吸収ガラスが採用されており、そのためカーテンが備えられていない。また初期に製造された3本は当初非冷房で、車内には扇風機を備えていた。1000形は1987年までに6編成が製造されたが、1981年製の編成は冷房準備車として落成(翌年江ノ電で初めて冷房化)、1983年製の編成は新造冷房車となり、1986・1987年に製造された編成では江ノ電で初めてカルダン駆動方式がされる等、数多のマイナーチェンジが施されている。最初期に製造された2編成も1987年に冷房化され、本系列は全て冷房車となった。なお、本形式は1980年に鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞しているが、国鉄・大手私鉄以外の中小私鉄でブルーリボン賞を受賞したのは本車が初めてである。6編成という本数は現在まで江ノ電の車両では最も多く、初期車製造から40年が経過しているが2003年からリニューアル工事が施工される等、引き続き主力車両として活躍が続いている。

 2014,11,03 峰ヶ原信号所〜七里ヶ浜


■Variation
 京福電鉄とのコラボレーションで、京福電鉄の新標準塗装である京紫色に変更された1002編成。江ノ電と京福電鉄では2009年から姉妹提携がなされており、その一環で江ノ電で京福色、京福電鉄で江ノ電色の車両を走らせることとなった。当初はアイボリーと緑のツートンカラーであったが、2011年以降京紫色への塗装変更が始まったために

 2014,11,03 七里ヶ浜
 リニューアル後の標準塗装を纏う1001編成。2015年に集電装置換装、行き先表示器のフルカラーLED化、液晶式車内案内表示器の設置、室内用のLED化等がなされ、現在の仕様となっている。

 2017,05,06 峰ヶ原信号場〜七里ヶ浜
 1981年に落成した編成は1100番台に区分されている。製造当初より冷房準備工事が施されていた点が特徴で、翌1982年に冷房装置が搭載されて江ノ電初めての冷房車となった。また、ブレーキの段数が増加しており、台車にも改良がくわえられるなどのマイナーチェンジがなされている。この番台区分は1編成のみで、以降の増備は1200番台に移行している。2006年にリニューアル工事が施工された他、2015年には集電装置換装、行き先表示器のフルカラーLED化、液晶式車内案内表示器の設置、室内用のLED化等がなされ、現在の仕様となっている。

 2017,05,06 鵠 沼〜湘南海岸公園
 1983年に落成した編成は1200番台に区分されている。既に1100番台が冷房化されていたこともあり、新造時より冷房装置を搭載している。この他、前照灯が角型となり、前面窓に遮光フィルムを貼り付け。更に車体の一部がステンレス製となり塩害等の防止が図られている点などが特徴となっている。また、車内の座席モケットが赤色とオレンジ色の交互配置となっている。この車両まで駆動方式が釣り掛け駆動方式であるが、狭軌(1067o)における新造の旅客用釣り掛け駆動車両は現時点で本車が最後の新造となっている。2011年にリニューアル工事が施され、500形以来では初めて液晶車内案内表示器が扉鴨居部に取り付けられた。一方行き先表示器のLED化は行われず英字入りの方向幕に換装されただけであり、2021年時点では1000形で唯一方向幕を有する編成となっている。

 2018,07,16 鵠 沼〜湘南海岸公園
 1986年と翌年に落成した編成は1500番台に区分されている。1200番台をベースとしているが、こちらはステンレス製の部分が更に増大している。また、本区分投入の時点でカルダン駆動方式の採用の目途がたったことから、江ノ電として初めてカルダン駆動方式を採用した。発電ブレーキやディスクブレーキの採用などの新機軸も本車両で初めて採用されている。2013年からリニューアル工事が施されたが、本車のリニューアルより行き先表示器がフルカラーLEDとなり、集電装置がシングルアームパンタグラフに改められている。

 2014,11,03 峰ヶ原信号所〜七里ヶ浜
 2018年時点での1501編成。前述のリニューアルに加え、前照灯のLED化が追加で行われている。

 2018,07,16 鵠 沼〜湘南海岸公園
 情報発信トレイン「S・K・I・P号」となっていた時代の1501編成。沿線の情報発信を目的とし、江ノ島や鎌倉の観光スポット、寺社仏閣などの写真がラッピングされていた。

 2008,09,02 鵠 沼〜湘南海岸公園
 登場当時の塗装を纏っていた1501編成。製造当時はアイボリーをベースにオレンジと赤のラインが入った暖色系の外観で、「サンライン」という愛称がつけられていた。1992年にいったん消滅するが、2009年に1000形就役30周年を記念してこの姿が復元され、2013年のリニューアルまでこの姿となっていた。

 2012,12,25 江ノ島
2021/02/07