ヨ5000形
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 国鉄では1959年10月から汐留〜梅田間を最高時速85km/h、所要時間11時間弱で結ぶ高速コンテナ特急貨物を運行することとなった。この際コンテナ車は最高時速85km/h対応のコキ5000形が新造されたが、2軸車である車掌車については85km/h運転できる車両が存在しなかったことから、ヨ3500形を改造のうえ85km/h運転に対応させることとなった。改造車は形式が改められ、ヨ5000形という形式がつけられた。本形式における具体的な改造は台車の改良である。2軸車は高速走行した際の蛇行動により、安定した走行が困難で従来は最高時速が65km/hであった。これを改良するために開発された装置が2段リンク式走り装置で、文字通り板バネを支持するリンクを2段とするもので、この機構により従来より高速でも安定して走行できるようになった。これにより最高時速85km/hでの走行に対応した。逆に言えば台車改造以外の点は殆ど改造されておらず、車体はほぼヨ3500形のままである。当初は12両が改造され、このうち7両が専用塗装を纏い新設されたコンテナ特急「たから」の殿を務めた。1962年には当初より最高時速85km/hとし、車体をヨ3500形の最終増備分に準じた新造車が100両増備され、こちらは車番が5050番台と区別された。1968年3月のダイヤ改正、所謂「ヨンサントオ」により貨物列車自体の最高速度引き上げがなされることになったため、1967年からは残るヨ3500形についても大半が台車を2段リンク化して最高時速を85km/hとしたことに伴いヨ5000形に形式編入しているが、この編入に際しては5000番台への改番ではなく、種車の車番に10000を足す形で改番されている。碓氷峠区間や北海道などで使用された車両を除き大半の車両が改造されており、総勢で1150両程度という一大勢力となり昭和40年代〜50年代の貨物輸送に貢献した。1977年以降石炭緩急車の置き換えを目的に、新造車グループの中から29両が低屋根化のうえ、平屋根に改造した車両が生じたが、これは石炭ホッパーの高さが通常の車掌車の車高を超過していたための措置で、この改造が施された車両はヨ5800番台に改番されている。後年は暖房装置の石油ストーブ化等の近代化も殆どの車両になされ、ヨ8000形の登場後も貨物列車の車掌車として使用されたが、1984年のヤード輸送の廃止、翌年の車掌車連結原則廃止のあおりをうけ、殆どの車両が国鉄時代に廃車された。因みにヨ5800番台は改造当初九州内で限定使用されたが、石炭列車の縮小と共に制約がなくなっている。国鉄分割民営化以降はJR東日本に事業用として5両が継承されたのみで、これも早々に廃車されている。廃車された車両の一部は保存されている他、台車を撤去の上で駅舎や簡易事務所への転用などがなされたものも存在する。ごく一部は動態保存されており、なかでも特筆事項として、国鉄廃車後大井川鐵道に渡った1両が、長年の留置の末東武鉄道に譲渡され、走行可能な状態に再整備されたという事例がある(車籍はないため本線走行は行わないが、稼働状態で南栗橋工場でSL試運転等に供されている)。

 2016,11,26 昭和の杜博物館


■Variation
 コンテナ特急「たから」時代の姿に復元され、京都鉄道博物館に保存されているヨ5008号車。初期にヨ3500形から改造された11両は、日本初のコンテナ専用列車である「たから号」に充当される目的で改造されているが、同列車に投入された車両については編成美を整えるためコンテナにあわせた淡緑3号を基調として、台枠部分をコンテナ車に併せた赤3号で塗装し、更に電照付きテールマークが掲載されて殿を務めるという、それまでの車掌車とは一線を画した姿となり、華々しいデビューを飾った。その後黄緑6号に塗り替えられたが、「たから」の発展的解消により他の車掌車同様黒色一色に塗りかえられていった。なお、本車は廃車後長年宇都宮貨物ターミナルに留置されていたが、京都鉄道博物館開館に際し整備のうえ譲渡されている。

 2024,09,19 京都鉄道博物館
 いすみポッポの丘では3両のヨ5000形が動態保存されている。このうち2両はブルートレインを模した青色一色で塗装されているが、現役時代にこの塗装を纏ったことはない。

 2013,08,03 いすみポッポの丘
 ヨ14202号車は黄緑色に塗装されている。初期に製造され、コンテナ特急「たから」に充当されたヨ5000形は後年黄緑4号に塗り替えられた他、赤3号の塗装が省略される車両もあらわれた。この塗装のまま石油ストーブを搭載し、識別用の白帯がデッキにつけられた車両も存在する。いすみポッポの丘で動態保存されているこの車両は黄緑色には塗られたことはないが、往時の姿を再現している。

 2013,08,03 いすみポッポの丘

2024/09/27