 |
ヤ550形は道床を始め線路敷に生える雑草の防除用に、除草剤を巻く目的で導入された職用車で、1976年以降に18両がトキ25000形無蓋車から改造されている。元々同種の目的でヤ500形という職用車が在籍していたものの、積載容量が小さく最高速度も65km/hに抑えられていたこともあり、新たな車両が求められたことで開発された形式である。前述のとおり本形式はタンク体を有するがタンク車からの改造ではなく、かつ完全新製車でもなく、トキ25000形無蓋貨車の台枠より上の部分の大半を撤去し、台枠上に新製したタンク体を設置することによりタンク車類似の形状となっている。タンク内に入れられた薬液はタンクの側面からポンプ及び配管を介して車端部の単管パイプに送られ、そこから適宜散布されるが、そのポンプの稼働用にディーゼルエンジンを搭載している。更に夜間作業用にタンク鏡面上部に投光器が2灯、所謂カニ目配置で設置されており、他のタンク車には見られない特徴的な外観となった。なお、改造は全車とも大宮工場で施工されている。もともとトキ25000形の最高時速は75km/hであり、前述のヤ500形と比べて速度向上を実現している。全国各地に配置されて除草作業に従事したものの、除草作業自体は無車籍のモーターカーによる牽引で行われることが多く、また除草作業自体も保線用機械で賄われる機会が増えたこともあり、殆どの車両は国鉄分割民営化直前の1987年に除籍されており、国鉄分割民営化についてはJR九州にヤ562号車の1両が引き継がれたのみとなっている。ただし、除籍はされたものの保線機械の扱いで引き続き除草剤散布に用いられた車両も存在する(JR東日本の保線機械に転じた車両は形状はそのままにクリーム色に塗装され、タンク体の中央部に大きくJRのロゴマークがあしらわれるという、車籍を引き継いだ車両よりも派手ないで立ちになった)。唯一引き継がれたJR九州では鹿児島車両所に配置され、用途が除草剤散布から単なる水散布(散水車)へと変わっている。これは桜島の噴火に伴う降灰による絶縁不良を防止するため、碍子に付着した火山灰をホースで散水することで除去し、絶縁不良の防止や回復が企図されたものである。散水車への転用後投光器は撤去されたが、台座のみは残されていた。専用の無蓋車・車掌車と組んで降灰時を中心に稼働することがあったが、晩年は殆ど稼働しないまま2014年3月に廃車され、これにより本形式は廃形式となった。国鉄時代に宝積寺駅に配置され、廃車後長期間宇都宮貨物ターミナルに留め置かれていた1両(ヤ565号車)が現在も那珂川清流鉄道保存会で静態保存されている。
2017,06,24 那珂川清流鉄道保存会 |