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ワフ35000形は元はワフ25000形として製造されていた鋼製有蓋緩急車を、ワフ29500形と同様の車体に更新した車両である。本形式の前身となるワフ25000形は1933年から製造が開始された有蓋緩急車であった。戦前〜戦中期に製造された車両であり、貨物の輸送力に重きを置いて設計された。そのため有蓋緩急車ながら積載容量8tとなっているが、その分車掌室のスペースが非常に小さく、デッキレス構造であったため2つあった側窓の一つが乗務員扉を兼ねる有様であった。ワフ25000形の1代前に製造されたワフ21000形や戦後まもなく老朽緩急車の置き換えを目的に製造されたワフ22000形が対照的に車掌室が広くとられていたこともあり、戦後になると貨物列車車掌の乗務改善が求められるようになった。折しも1955年にワフ29500形が製造されるとワフ25000形の車掌室の居住性の悪さが更に際立ったため、1960年以降にワフ25000形をワフ29500形並みの車体に更新し、乗務環境の改善を図ることになった。この更新が施された車両がワフ35000形に改番されている。ワフ25000形は910両が製造されたが、このうち844両が1965年までにワフ35000形に改造されている。改造に際しては、ワフ25000形と同様デッキ付きとなり、積載荷重を5tに縮小することでその分車掌室のスペースを増大している。車掌室内にはダルマストーブが備え付けられたほか、車軸発電機も搭載され、それにより室内灯や埋め込み式の尾灯も設けられるなど、ワフ25000形と比べて大幅な居住性の向上を実現している。また、併せて台車を2段リンク式に改造し、最高時速が75km/hに引き上げられている。改造により、結果的にワフ29500形と酷似した外観になったが、荷物室側の側扉はこちらの方が大きく、デッキ付近の構造や側窓の数(ワフ29500形は片側3つ、片側2つだが、こちらは両側2つ)にも差異がある。貨物列車に車掌車連結が必須だった時代において有蓋緩急車は輸送力の低い地方線区を中心に重宝される存在であったが、モータリゼーションの進展や直行型輸送への切り替えにより貨物輸送そのものが減少になったことに加え、列車防護無線の発達により1985年3月のダイヤ改正で車掌車連結が原則廃止されると用途の喪失から余剰となり、国鉄分割民営化を待たずして全車廃車されている。このうちワフ35597号車は廃車後宇都宮貨物ターミナルに留置されていたが、2011年に若桜鉄道八東駅構内に移設されており、旧貨物ホームに現在も静態保存されている。
2015,05,04 八 東 |