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ワフ29500形は1955年以降に製造された2軸緩急有蓋車である。荷室と車掌室を有する有蓋緩急車は、従前荷室が広くとられているか車掌室が広くとられているかのいずれかであり、特に前者についてはデッキレスであった他、車内にストーブを設置するスペースがとれなかったことから、乗務環境の改善が求められる状況であった。本形式は車掌室における居住性の改善と輸送力の両立を図るため、全長8m弱の車体のうち荷室部分の積載量を5tとし、車体の半分ほどをデッキ付きの車掌室のスペースとしてあてがっている点が特徴である。車掌室部分にはダルマストーブが設置された他、車軸発電機及び蓄電池を搭載し、車内照明とテールランプが当初より備えられており、前述の目的を実現している。走り装置は当初より2段リンク式となっており、最高速度75km/hでの走行が可能となっている。本形式は1961年までに650両が製造されたが、本形式の形態は有蓋緩急車の決定版といえるもので、本形式より前に製造されたワフ25000形やワフ29000形等の有蓋緩急車が軒並み本形式とほぼ同等の車体に載せ替えられる等している。ストーブは当初石炭ストーブであったが、後年には石油ストーブに換装された車両もあり、当該車両は車掌車同様識別のために妻面と側面に白線が挿入されている。ワフ29500形をはじめ同型の緩急有蓋車はローカル線を中心に全国で貨物輸送に従事したが、モータリゼーションの進展等に伴う貨物列車の廃止や合理化によって活躍の幅が狭まり、1985年のダイヤ改正で車掌車連結が原則廃止となったことで運用を離脱し、国鉄分割民営化を迎えることなくその姿を消した。廃車後は数両が保存車として残された他、足回りを外され倉庫や駅舎に転用された車両も存在する。
2014,06,27 小樽市総合博物館 |