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ワフ21000形は1933年に製造が開始された、国鉄では初となる鋼製有蓋緩急車である。全長は約7.8mで、従前使用されていた木造車掌車の置き換えを兼ねていたことや、後述する荷室の荷扱い職員の乗務が想定されたこともあり、車掌室が2人乗務を前提として広めにとられている点が特徴である。反面荷室への積載荷重は小さく、2tにとどまっている。この荷室は主に他の貨物との混載にそぐわない鮮魚輸送や小口貨物の輸送に用いられることが想定され、底部に荷摺木や排水口を設けている。積載荷重は比較的軽いものの積載時は荷室側に荷重が偏るため、対策として軸距を一般的な二軸有蓋車よりも長く設定し、荷室側に寄せた車軸配置となった。この特徴は以降の有蓋緩急車にも引き継がれている。車掌室側の車内には区分棚や大型机、執務用椅子、休憩用椅子等を備え、既存の緩急車、車掌車に比べて接遇が大きく改善されている。なお、当初は標識灯は可搬式、車内照明は石油ランプであり、暖房装置の類は設置されていなかった。本形式は1939年までに775両が製造された。後に本形式を元にしたヨ2000形が製造されており、有蓋緩急車という位置づけではあるが、その後の近代車掌車の系譜を築いた車両であるといえる。照明が石油ランプかつストーブを備えていない等後継の車両と比べると設備面で見劣りがしたため、戦後の1952年以降に石炭ストーブを追設し、1960年代には簡易発電機と蓄電池を搭載することで車内照明を電灯に改めて、常設の尾灯を追設している。更に所謂「ヨンサントオ」のダイヤ改正で大半の貨物列車に着いて速度向上が図られることから、1967年以降台車構造を2段リンク式に改造したことで、最高時速はそれまでの65kｍ/hから75/km/hに向上した。なお、一部1段リンク式かつ最高時速65km/hで残された車両もあり、そちらは形式がワフ12100形に改められている。ワフ121000形に改番された車両は1975年までに姿を消した他、2段リンク化された車両も老朽化及び車扱貨物の減少、車掌車連結の省略など複合的な理由から1985年までに全車廃車されているが、1両が1977年に西濃鉄道に譲渡されており、スイッチバックを有していた昼飯線において推進運転に用いられた。西濃鉄道への譲渡に際しては、デッキ部に汽笛、貨物室内に汽笛用空気ダメを設置している。昼飯線の列車は1989年から休止となったが、以降も2002年までは車籍を有し、美濃赤坂駅構内に留め置かれていた。黎明期の鋼製有蓋緩急車の貴重な生き残りであり、廃車以降は貨物鉄道博物館に移設され、同地にて保存されている。 2019,07,16 貨物鉄道博物館 |
