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高度経済成長期を迎えると化学工業の発展から従来とは異なる化成品の貨物輸送が求められるようになり、用途に応じた専用貨車がいくつも開発されてきた。タム8000形もこの趨勢により開発された私有タンク車の一つで、医療、工業用途を中心に用いられる過酸化水素を輸送する専用のタンク車として1962年以降に製造されている。ほぼ同時に製造されたタサ5600形とともに、国内では初の過酸化水素を専用種別とするタンク車であり、こちらは15t積みの2軸車となっている。過酸化水素は殆どの金属と反応し水と酸素に分解されるため、移送するには過酸化水素が分解しづらい金属を用いる必要があり、それにより純アルミ製のタンク体が採用されている。純アルミ車体は一般的な構成タンク体と比べて強度が低いため、台枠とタンク体を支える受台が大型化されている他、タンク内部に補強板を備えている。車体中央のドーム上部にある液入れ管から輸送物を積載し、空気圧により同じくタンク上部から荷卸しする仕様となっている。空気管には異物混入を防止するための防塵フィルターがつけられている他、アルミ鋼体であっても過酸化水素の分解そのものは生じるため、発生した酸素を放出する空気抜きの機構も有する。なお、本形式は2軸貨車だが、製造当初から走り装置の2段リンク化がなされており、当初から最高時速は75km/hにとなっている。8000形は1965年までに15両が製造され、化学会社3社の私有としてそれぞれの工場最寄り駅を常備駅とした。積載荷重の異なる他のタンク車と混用され、過酸化水素の輸送に従事した。国鉄の分割民営化に際してはタム8003以外の14両がJR貨物に継承されており、とりわけ三菱瓦斯化学所有の12両が21世紀を迎えても使用されていたが、過酸化水素の輸送自体がタンクコンテナに置き換えられ、2003年3月に他の過酸化水素輸送用タンク車と同時に一斉に廃車された。タム8000号車のみ三岐鉄道丹生川駅構内に移設され、同地に開館した貨物鉄道博物館にて静態保存されている。
2019,07,16 丹生川 |