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主に工業用途で幅広く用いられている酸化アルミニウムは一般的にアルミナと称し、工業用途の他アルミニウムを製錬する際の原料ともなる化合物である。1950年代以降、このアルミナについて、アルミナを産出する工場からアルミニウムを電解製錬する工場まで移送するための専用貨車が製造されることとなり、昭和電工と日本軽金属という2社の私有貨車として9形式が製造されている。タキ8450形は数あるアルミナ輸送用の私有貨車の中では比較的後発のタンク車であり、日本軽金属の私有貨車として1962年以降に7両が日本車輌で製造されている。本形式は既に製造されていたタキ8400形アルミナ輸送用貨車の兄弟形式ともいえる車両である。当時の日本軽金属ではアルミニウムの電解製錬を行っていたが、このアルミニウムの用途拡大も兼ね、台枠までアルミとした純然たるオールアルミ製のタンク車を1960年に開発した。これをタキ8400形と称し、川崎車輌で15両が製造されている。タンク体にアルミニウムを採用している車両は戦前からあるが、台枠までアルミ製とした貨車はこれが初の事例となっている。それまでのアルミナ輸送用貨車が最大積載荷重が35tであったところ、台枠を含めアルミ車体を採用することによる軽量化の恩恵を受け、車長は15m級となり、最大荷重を40tまで引き上げた反面自重が軽減されている。こちらのタキ8450形は前述のとおり日本車輌製で、川崎車輌製のタキ8400形に半ば対抗する形で製造されており、同じくオールアルミ製の40t積みタンク車ではあるものの、車長はタキ8450形の方が1m程短く、タンク形状も両者で異なっている。特にタキ8450形ではおにぎりやかまぼこと形容されるような、タンク体下部が角張りを帯びた独特な断面形状となっている。台車もタキ8400形とタキ8450形では異なっており、前者は川崎車輌が開発した新設計の独自台車(川重601と称す)が採用されていたが、後者は一般的なベッテンドルフ台車(TR41C)が採用されている。いずれも荷扱いはエアスライド式が採用されており、空気による押出で車体下部から荷扱いを行っていた。これらの形式は運用上の制約はなく、日本軽金属が私有する他の貨車と同様にアルミナ輸送に従事した。日本軽金属ではアルミナを精製する工場が清水港線の三保駅に近隣して位置しており、同所からアルミニウムの製錬を行っている蒲原工場や新潟工場に向けてアルミナの移送を行っていた。しかし貨物輸送の縮小を受け、清水港線そのものが1984年に廃止されると用途がなくなってしまい、結果同年中に全車除籍されている。タキ8453号車1両のみが解体を免れ、かつて清水港線三保駅があった位置に作られた公園「三保ふれあい広場」にて、入換動車と共に静態保存されている。なお、日本軽金属のアルミナ輸送は清水港線廃止と共に全て廃止されているが、昭和電工におけるアルミナ輸送は民営化後の2002年まで続けられた。
2025,02,09 三保ふれあい広場 |