タキ43000形
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 従来石油会社ごとに給油所が分かれており、他の車扱貨物と同じく1両単位での輸送が主に行われていた石油類輸送について、各地に給油所への中継拠点となる駅を設け、油槽所から拠点駅まではタンク車で組成された専用の貨物列車を仕立てる(そこから各給油所へはタンクローリーで移送する)ことによる一括大量輸送を行うことで、輸送の効率化を図ることが計画された。このため、国鉄及び各製油会社が共同出資のうえ、1966年に日本オイルターミナル株式会社が設立されたが、同社が保有する私有貨車として、油槽所から輸送拠点までの石油類専用列車に充当する目的で1967年に2形式のタンク車が開発された。このうち、ガソリン類を輸送する専用のタンク車として開発されたのがこのタキ43000形である。本車の特徴はタキ9900形で実用化されたフレームレス構造を採用し、当時としては最大級の輸送量を確保したことにある。即ち従来の鉄道車両では車両の安定に欠かせない存在である台枠が台車間で省略されている代わりに、タンク体の強度を強めることで台枠の機能をタンク体に持たせるもので、これにより積載量増大の妨げとなる側梁を省略できることから、直径の違うタンク体を組み合わせた異径胴タンクの採用で車両限界最大まで容積を拡大することで、それまでの2軸ボギータンク車ではなしえなかった43tもの積載荷重を実現している。ただし、この積載容量を実現した反面軸重は15tあるため、入線できる線区は限られている。最高時速は75km/hとなっている。塗装は同じく物資別適合輸送に用いられたホキ2200形と同様専用塗装があてがわれ、青15号が採用された。それまでタンク車は黒色が通例であったため、青色の本形式は目立つ存在であった。本形式は1967年に37両が製造された後、台車がコロ軸受け台車に改良された100番台が1968年から1974年までに481両、北海道向け仕様の500番台が15両が製造され、北海道から名古屋までの油槽所と輸送拠点への一括輸送に従事した。1974年には日本石油輸送の私有貨車も製造が開始され、2社が所有することになった。ただし1970年代に入りタンク車に起因する事故が国内外で頻発したことを受け、万一漏洩した際の影響が大きいタンク車については安全性の確保が重要事項となり、フレームレス構造のタンク車は製造禁止となってしまった。以降は側梁付きのタンク車(タキ40000形等)が製造されたが、荷重43tという容量は側梁ありでは実現できず、積載効率で本系列に勝る車両が存在しなかったことから結局規制緩和と安全性の向上により、1982年からは再度本系列が増備されることとなった。増備は国鉄分割民営化以降も進み、最終的には1993年までに819両が製造され、以降の増備はタキ1000形に代わることとなった。このうち、1987年に製造された車両のみステンレス製タンクを採用、1989年以降に製造された車両はタンク体の設計変更及び手すり、踏み板のアルミ化により、軸重15tを維持しつつ荷重容量が44tと11増大している。初期車製造から45年以上経過し、現在は老朽化及び北海道における石油輸送終了に伴う用途廃止も進んでいるが、未だに多くの車両が在籍しており、タキ1000形に交じりガソリン輸送に用いられている。

 2017,06,24 郡 山


■Variation
 栄えあるトップナンバー車であるタキ43000号車。一貫して日本オイルターミナルが所有している。後年台車が100番台と同じものに交換されているが、大きな変化もなく製造から55年経過しても現役で使用されている。

 2014,02,23 蘇 我
 1968年以降に製造された車両は車番が飛び43100番台として区分されている。こちらは軸受けをコロ軸受けとし、制動制輪子を鋳鉄からレジンに変更したTR214Aという台車に改められており、後に既存車両もあわせられている。なお、このグループは元々日本オイルターミナルの所有貨車だが、日本石油輸送もタキ43000形を所有するようになってから、所有会社を移動した車両も現れている。

 2014,02,23 蘇 我
 保安対策が強化される直前の1974年に製造されたグループでは、立て続けに発生したタンク車の事故を受けて既存の車両に比べ安全性の確保に重きが置かれている。デッキ部の長さを左右対称とする等の設計変更がなされた。このグループは95両が製造されたが、車両番号が不足してきたことから北海道仕様のタキ43500番台を避けるように付番されている。このグループの後はフレームレス構造を持ちタンク車の製造が制限されたため、次の増備は1982年に持ち越されることとなった。

 2014,02,23 蘇 我
 1982年以降再度増備が開始されたタキ43000形。従来の車両に比べて万一の転覆時にも漏洩等が起こりにくいように設計されており、タンクの形状を見直し直径を拡大する反面全長を短くすることで、車端部とタンク鏡板までの距離を500o確保した。この改良により、タンク体の鏡面はそれまでの車両に比べて窄まった印象を受ける。この保安対策が施された車両は600番台に区分されており、以降タキ243000番台に至るまで下3桁は本番台の続き番号となっている。

 2017,06,24 郡 山
 日本石油輸送所有の43600番台。元々日本オイルターミナルの専用貨車だったタキ43000形だが、1974年からは日本石油輸送も本形式を所有することになった。こちらは他のタンク車と同じく黒一色に塗装されている。

 2023,02,25 蘇 我
 1987年に製造されたタキ143645号車。本車のみタンク体がステンレス製となり、無塗装のためガソリンタンク車の中では唯一原銀色となっている。台車はコキ1000形の発生品(TR215F)を流用している。ステンレス製タンク体の試作車両であったが量産はされず1両のみの特異車となっている。現在は浜五井駅常備となっており、千葉県内から各地に向かう石油列車に連結されることがある。その特徴的な姿から「銀タキ」の愛称がつけられ、貨車の中では一際目立つ存在である。

 2024,02,24 蘇 我
 1989年以降に増備されたタキ43000形は、更に仕様変更が施されたことから車番が240000番台となっている。手すりや踏み板をアルミ製にすることで軽量化を図り、その分タンク体の寸法を見直すことで、積載容量は44tに増大している。本グループは元々日本石油輸送の所有車両として落成しており、初期に製造された車両は既存車両と同じく黒一色塗装となっている。

 2014,02,23 蘇 我
 1990年に製造されたタキ243681からの日本石油輸送所有車は、イメージアップのためエメラルドグリーンとグレーのツートンカラーになった。黒一色であった既存車両と比べ、イメージが大きく変わっている。このデザインはタキ1000形に引き継がれている。なお、1991年製のタキ243756以降の車両はブレーキ配管等の細部が更に変更されている。

 2014,02,23 蘇 我
 日本オイルターミナルが所有するタキ243000番台。前述のとおりこのグループは日本石油輸送の所有車両として製造されたが、日本オイルターミナルに移籍した車両も存在しており、基本的には青15号に改められている。

 2023,08,09 蘇 我
 日本石油輸送のツートンカラーのまま日本オイルターミナルに所有者が移動したタキ243864号車。日本オイルターミナルと日本石油輸送間で保有車両の移籍が行われることはままあるが、移籍当初は外装をそのままに所有者及び常備駅の記載のみ変更される車両もある。いわば過渡的な姿で、検査時に本来の塗装に塗り替えられることが多い。

 2023,02,25 蘇 我
2024/04/14