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日本有数の非鉄金属メーカーの一つである東邦亜鉛株式会社では、戦前より群馬県安中市で亜鉛の製錬を行っていたが、1960年台になると福島県の小名浜に亜鉛焼鉱の精製を行う工場が開設された。両工場間の距離が離れているため、金属等の工場間移送を鉄道貨物で行うようになった。亜鉛の原料となる亜鉛精鉱を焼成することでできた亜鉛焼鉱を更に製錬することで金属亜鉛が造られるが、亜鉛精鉱の焼成は基本的に小名浜で、亜鉛焼鉱から金属亜鉛への精製は安中で行われている。即ち亜鉛焼鉱を小名浜から安中まで移送する必要が生じるため、この輸送のために1969年にタキ15600形が製造され、宮下〜安中間で亜鉛焼鉱の輸送が行われた。そのタキ15600形も製造から40年が経過し老朽化が進んだこと、亜鉛焼鉱の輸送を引き続き鉄道で賄う方針となったことから、新造車両の導入により旧来のタキ15600形を置き換えることになった。これにより日本車輌で製造された亜鉛焼鉱輸送用のタンク車がタキ1200形で、2010年から翌年にかけて、タキ15600形と同数の20両が東邦亜鉛の私有貨車として配備された。タンク体はタキ15600形に準じた形状で、中梁が省略されているがタンク下部の補強を強化することで中梁の代替としている。上部にある3つのハッチは両側2つが亜鉛焼鉱の積み込みに用いられ、中央の一つは集塵口として機能している。荷役方式はエアースライド式が採用されている。本形式では長さが50p増大しており、積載容量も0.3t増となった。塗装は当時他に連結していたトキ25000形無蓋車の色に近い赤茶色一色塗りとなっており、黒一色だったタキ15600形とは印象が異なる。また台車は95km/hでの運転が可能なタンク車タキ1000形に搭載される台車の同型が採用され、専用貨物列車の貨車の一形式ながら、最高時速95km/hでの高速走行が可能となった。なお、台車色はグレーである。タキ1200形は前述のとおり2011年の時点で20両の陣容になりタキ15600形を全て置き換えている。なお、常備駅は福島臨海鉄道の小名浜駅(落成時の常備駅は小名浜駅隣接の宮下駅だったが、東日本大震災後の復旧事業の一貫により小名浜駅が移転の上宮下駅と統合したため小名浜駅常備となった)で、小名浜〜安中間を原則として1日1往復運転する。本形式導入時点では常磐線と東北本線の連絡は小名浜行きが武蔵野線経由、安中行きが田端信号所経由であったが、2015年3月から双方とも武蔵野線経由になり、更に2016年3月からは最高時速が95km/hに引き上げられ、晴れて本来の性能を発揮するに至っている。2022年にトキ25000形を使用した亜鉛精鉱の輸送が終了してからは本形式の亜鉛焼鉱輸送のみ残されたが、ガソリン輸送以外の貴重な専用貨物列車として引き続きその存在感を示している。
2024,05,01 さいたま新都心 |