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1998年6月に稼働を開始した中国電力の三隅発電所では、宇部興産の伊佐工場(美祢線の美祢駅に近接)で生成された炭酸カルシウムを同所に運搬の上燃料に用い、その結果生成されたフライアッシュを再度宇部興産伊佐工場に運搬してコンクリートを製造するサイクルが計画された。三隅発電所は山陰本線岡見駅の近くに立地し、折しも同線の経路変更で使用されなくなった旧線跡が至近にあったことから、それを専用線に転用することで炭酸カルシウム・フライアッシュのいずれも鉄道による貨物輸送で賄うことになった。炭酸カルシウムとフライアッシュの双方を輸送する「複数積荷兼用貨車」としてはホキ1000形という前例があったが、荷役設備の関係からホッパ車とすることができず、新たにタンク車を用意することになった。これにより1997年から翌年にかけて製造された宇部レールサポート(後の宇部興産セメントサービス)の私有貨車がタキ1100形である。日本車輌で24両が製造された。全長14.5mという長さはホキ1000形と同様だが、中央部分が膨らんだ高張力鋼製の異径胴タンク体となったこちらは、板厚を鏡板・胴板ともに4.5oと極限まで薄くしたこともあり、荷重が37tとなった。自重そのものは57tにも及び、粉体輸送用の貨車としては唯一軸重が15tある。塗装は宇部興産のトラックにも見られるような薄青色で、他の貨車には見られない塗装であった。荷役方式はエアスライド併用圧送方式が採用されている。台車はタキ1000形のものをベースとしており、最高時速95km/hでの運転が可能となっている。タキ1100形は1998年6月の三隅発電所1号機の稼働開始と共に美祢〜岡見間で運転を開始し、美祢駅を常備駅とした。同区間は長門市周りの方が距離は短いものの、前述した軸重の関係もあり、より線形の良い山陽本線、山口線を経由する、美祢〜厚狭〜小郡(新山口)〜益田〜岡見というルートで運転された。斜陽化が進む専用貨物としては極めて珍しい新設貨物列車であり、DD51形が重連で牽引するその姿は「岡見貨物」として親しまれた。しかし2010年に美祢線・山陰本線の不通、2013年に山口線の不通で長期間の運休を余儀なくされた後、貨物輸送契約の更新を行わないことが決まったため、運休したまま2014年3月のダイヤ改正で「岡見貨物」は設定取りやめとなった。製造から15年ほどではあったが、適当な転用先もないため全車廃車されている。
2008,08,08 厚 狭 |