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戦中期に戦争遂行の目的で火薬や爆薬が大量に製造されるとその原料となる濃硝酸の輸送が必要になり、その目的で1934年に開発された15t積の2軸タンク車をタム100形と称した。濃硝酸は多くの金属を溶かす性質を有するため、安定輸送のため濃硝酸と反応しない材質が必要となり、当時としては先進的なアルミニウム製のタンクが採用された。前述の目的のため戦中期に多くの車両が製造されたものの、太平洋戦争終了以降濃硝酸輸送が減少したため余剰気味となっていた。アルミニウム製の貨車は希少であり、濃硝酸と同じく鋼鉄製タンク等での輸送に向かない物質の輸送用に転じた車両も多く、それらは元のタム100形から改番され、輸送種別ごとに独立した形式がつけられた。その中でホルマリンの輸送用途に転じた車両がタ3050形である。本形式以外にもホルマリンを専用種別とするタンク車は複数形式が製造・改造されたが、タ3050形はそれらのはしりといえる存在である。タム100形は15t積であったが、積載物の比重の関係で10t積となったため形式は「タ」となっている。タンク構造は種車と変わらず、車体中央のドーム上部にあるマンホールから輸送物を積載し、空気圧により同じくタンク上部から荷卸しする仕様であった。タ3050形は1952年から1964年までに42両が配備された。種車となった車両にはタム100形の他タ2900形(メタノール輸送用の10t積みタンク車)等が存在したが、いずれも元はタム100形である。また本形式からもタ2900形へと用途変更により改番された車両もある。化学工業系メーカーの私有となり、基本的にメーカーの工場最寄り駅を常備駅としてホルマリンの輸送が行われた。他の2軸車同様走行機構は後に2段リンク式に改造されているが、1970年代には廃車が進み1978年までに営業線上からは退いている。全廃となって久しい形式ではあるが、1973年に廃車となったタ3077号車が長年岩手県北上市内に置かれており、これが2014年に那珂川清流鉄道保存会に引き取られることとなり現在は同所で保存されている。
2017,06,24 那珂川清流鉄道保存会 |