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ソ80形は1957年以降に製造が開始された事故復旧・救援用の操重車である。既に同種の操重車としては戦前製のソ20形やソ30形が大都市近郊を中心に配備されていたが、脱線事故時の復旧の迅速化の観点から、配備を拡大することになったため製造されたものである。ソ30形をベースとしており、主巻の最大荷重が65tである点、台車配置が3軸ボギー台車2組という点、作業時に10km/h程度の低速ながら自走可能であるという点(回送時の最高時速は65km/h)も同一である。本形式では、既に導入されていたソ100形(荷重15tの事故復旧・救援用操重車)と同様、クレーンブームや自走時の動力がディーゼルエンジンによるものとなっている点が特徴である。初期に製造された3両はディーゼルエンジンで電動機を発電し、ブーム稼働やアウトリガー張り出し、自走等を電力で賄う電気式が採用されていたが、1963年に製造されたソ84号車からは駆動系が油圧式に変更された。また、ソ83号車までがソ30形と同様主巻と補巻を有していたが、ソ84号車以降は主巻のみとなり、油圧駆動の性能を活かし、巻上速度を重量に応じて3段階に切り替えることで代替とした。またこのグループからはクレーンブームを倒した状態でのクレーン操作ができるようになり、架線下での作業が考慮されている。1969年製のソ98号車からは更に設計が変更され、クレーンブームが直線状のものに改められている他、機械室の窓にHゴムが取り入れられる等の変更点がある。最終的に1969年までに20両が製造されたが、それ以降車籍を有する脱線復旧用の操重車は現在に至るまで製造されていない(JR東日本は鉄道クレーン車を現在も保有するが、これは無車籍の機械扱いとなっている)。なお、前述のとおりソ100形が既に在籍していたことから、ソ99の次に製造された最終増備車はソ180というインフレナンバーが付番されている。本形式は北は北海道から南は九州まで各所に配置され、事故等万一の事態に備えた。半数以上の車両が国鉄末期に除籍となったが、国鉄分割民営化を待たず全車廃車されたソ30形とは異なり、こちらは9両が国鉄分割民営化に際し各旅客会社に1ないし2両継承された。残存車は引き続き車両基地等で待機していたが、最後まで残存したJR東日本のソ91号車(盛岡運転所所属)が2001年に廃車されたことで形式消滅となった。現在、国鉄時代に長万部駅常備であったソ81号車が三笠鉄道村で静態保存されている。かつてはJR東海に継承された後に廃車されたソ180号車も静岡県の佐久間レールパークに保存されていたが、同園閉園に伴い解体されてしまったため、現存はソ81号車1両のみとなっている。
2014,06,28 三笠鉄道村 |