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ソ300形は1966年に製造された、橋桁架設用の操重車である。橋桁架設用の操重車は1960年にソ200形が開発されていたが、本形式はその改良型といえる存在である。車体部分とクレーン部分からなっており、最大35t・最長23mにもなるコンクリート製橋桁をクレーンブームにより引き上げることができる。クレーンブームは水平に突き出す構造のため架線下においても支障をきたさず作業を行うことができる他、アウトリガーを張り出しことにより、クレーンブームを左右4mまで旋回することができ、隣接線における架橋工事も可能となっている。クレーンブームの伸縮・旋回は油圧により行われる。また、クレーンの張り出しに伴い変動する車体のバランス調整は、搭載されているバランスウェイトの移動により行われている。このクレーンブームを支えるため、本形式における台車は4軸台車が前後に各2基ずつ搭載されている4-4軸複式ボギーというもので、即ち片側のみでも1車両あたり16個もの車輪を有している。1両あたりの全長は27.5m、自重は153.5tもあり、日本の鉄道において史上最大となる鉄道車両である。ソ200形が単独での走行ができず機関車などでの移動が必要であったことを踏まえ、こちらは出力300PSの走行用ディーゼルエンジンを搭載しており、ブルームの操作を賄うのみならず最高時速25km/hで自走できるようになっており、操作室も車体上部に有する(自走時は工事用の移動機械扱いで、線路閉鎖を行っていた)。回送時の最高時速は75km/hで、一般貨物列車に連結されての走行が可能である。ブレーキは自走時と回送時で切り替えることができる。また勾配区間での作業に備え、粘着力を高めるために空気バネを用いて軸重を10tと17tに切り替えることが可能である。ソ300形は2両が製造されており、架線下や山間部、並行道路が狭溢であるなどトラッククレーンでは容易に作業できないところを中心に、仮設架橋の設置や既存橋桁の交換などに従事した。状況によっては2両同時稼働により相吊りの形で、単体で許容される荷重・長さを超える橋梁の吊り上げを行うこともあった。国鉄時代は三島駅に隣接する三島操機区に常駐していたが、国鉄分割民営化に際しては2両ともJR東日本に継承された。2両とも田町電車区に在籍している扱いで、東京工事事務所付で川崎貨物駅を常備駅としていた。時に他のJRにも貸与する形で引き続き橋梁架設に用いられたが、経年から2001年までに2両とも廃車されている(余談ではあるがソ301号車の廃車回送を兼ねた大宮総合車両センターへの送り込みはEF58-61号機が牽引している)。ソ300号車は碓氷峠鉄道文化むらに移設され、同地にて静態保存されている。ソ301号車も大宮総合車両センター内に長らく保管されていたが、2016年に解体されている。
2012,08,23 碓氷峠鉄道文化むら |