 |
N700Sのうち8000番台は、西九州新幹線の開業に合わせて同線用に配備された車両であり、全車とも日立製作所で製造されている。車体形状こそ東海道・山陽新幹線に投入されているN700Sと同様であるが、こちらはJR九州仕様ということもあり、「九州らしいオンリーワンの車両」というコンセプトの下、水戸岡鋭治氏によるデザインとなっている他、6両で1編成を組んでいる。外装は800系に近く、白を基調として腰部が赤く塗装されており、窓下には赤帯とロゴマークが配されている。本車の配置される西九州新幹線は現時点では独立した線区となり、武雄温泉〜長崎間の「かもめ」専属で用いられることから、カモメを模したロゴマークが採用されている他、当時のJR九州の社長による揮毫があしらわれている。また前頭部のノーズ先端部に黒地でロゴマークが配されている他、前照灯回りが黒く縁取られており、従来のN700Sとは大きく印象が異なっている。制御方式はSiC-VVVFインバーター制御となっており、リチウムイオンバッテリーを搭載することで停電時にも自走可能となっている。本番台の走行する西九州新幹線は最高時速が260km/hにおさえられることから、車体傾斜装置は搭載されていない。反面急勾配の連続する同線における安定走行のため、6両とも電動車となっている。一部の編成は軌道検測装置または架線検測装置が搭載されており、営業運転を行いながら設備のモニタリングを行うことで、検測車を不要としている。車内は普通車自由席と普通車指定席に二分されており、グリーン車は設けられていない。普通車は2+3人掛けのリクライニングシートが1040oピッチで展開する。座席形状は東海道・山陽新幹線系統のN700Sと同一だが、こちらは黄色系のモケットとなっている他、床材の模様も異なっている。普通車指定席は2+2人掛けのリクライニングシートとなっている。指定席の座席は800系のように難燃木材をフレームに用いている他、座席モケットは車両ごとに異なり、1号車が「菊大柄」、2号車が「獅子柄」、3号車が「唐草文様」があしらわれている。このように座席やカラースキームは九州仕様に改められているが、通常のN700Sと同様、車内案内表示器は液晶表示器が採用されている。本番台は2021年から翌年にかけて当初6連4本が配置され、2022年9月の西九州新幹線開業と同時に営業運転を開始した。その後予備車を兼ねて2023年にも1本が増備され、現時点では6連5本の陣容となっている。
2023,09,23 諫 早 |