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試作車が2010年、量産車が2012年にそれぞれ登場。従来貨物駅等での貨物入換はDE10形やDE11形が主にその任にあたっていたが、経年により老朽化が進んでいた。HD300形はそれらの置き換えを目的に開発された、入換用の機関車である。JR貨物の機関車としては初めてディーゼル機関と蓄電池によるハイブリッドシステムを用いたハイブリッド機関車となり、形式の「H」もそれに由来する。DE10形と同等となる全長14.3mのセミセンターキャブ車体を有し、赤を基調に運転台回りを黒く塗装した外装となっている。また前面下部は警戒色として黄色と黒のゼブラ模様となった。本形式は車体を4つのモジュール(主変換モジュール、蓄電池モジュール、運転室モジュール、発電モジュール)に分けられているのが特徴で、保守性の向上の他、将来的な蓄電池等の機器更新やそれに伴う性能向上も容易な構造となっている。ハイブリッドシステムは旅客車でも見られるシリーズハイブリッドと称されるものであり、即ちディーゼル発電機で発電した電力と蓄電池からの電力で主電動機を作動・制御させるものである。制動時に発生する回生ブレーキを蓄電池に蓄電することで、力行時の電力を補うことができる他、発電機からの電力を蓄電することも可能となっている。これにより、窒素酸化物などの有害物質の排出や騒音については既存のディーゼル機関車と比べて大幅に低減している。主電動機には機関車としては初めて永久磁石同期電動機が採用されており、既存の主電動機と比べて高効率化が図られている。なお、本形式は入換に特化した機関車と位置付けられているため、自走での最高時速は45km/hに抑えられており、本線上の回送時は他の機関車に連結され、無動力の状態で牽引されることになる。被牽引時の最高時速は110km/hとなっている。前述のとおり入換用途であることから、運転台はDE10形等と同様進行方向に対して横向きの配置となった。試作車における試験の後、2012年から量産車の製造が開始され、2012年3月のダイヤ改正から順次運用に入っている。なお、試作車は尾灯が丸形で前照灯とは離れた位置に設置されていたが、量産車は角型となり前照灯直下に搭載されている。また前面手すり形状が変化する等の変化が生じている。2022年までに基本番台が37両まで増備されている他、2014年には寒冷地仕様として前面への風防板の設置ややセラミック噴射装置の増加等がなされた500番台3両が竣工し、現時点では総勢41両の陣容となっている。北海道から九州に至るまで、各地の貨物ターミナルを中心に入換に従事している。
2014,05,24 大宮総合車両センター |