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試作車が2012年、量産車が2014年にそれぞれ登場。従来青函トンネルを挟む東青森〜五稜郭間については、ED79形やEH500形が貨物列車を牽引していたが、2016年の北海道新幹線開業後は青函トンネル区間が新幹線仕様となり、即ち電圧が交流25000V、保安装置がDS-ATCとなるため、両形式の入線が不可能となる。このため同区間専用となる複電圧仕様の機関車を用意することとなり、製造された機関車がEH800形で、JRが開発した初の交流専用電気機関車である。EH500形をベースとした2車体永久連結の8軸駆動電機であり、デザインは特にEH500形の試作車・1次量産車に準じている。外装は赤を基調としているが、銀色と白色の波型ラインが配されており、新幹線と共用の区間を走ることによるスピード感が表現されている。また、青函トンネル用のデジタル無線LCXアンテナを搭載している関係で2エンド側の側面に膨らみがある点も外観上の特徴である。1車体にコンバーターとインバーターからなる主変換装置を2台搭載しており、1台の主変換装置で2台の台車を制御する方式をとっており、インバーターはIGBTが採用されている。駆動方式は一般的な電気機関車と同様釣り掛け駆動方式が採用されている。前述のとおり本形式は交流20000Vと交流25000Vの双方を走行可能だが、主回路の切り替えは行わず電圧に応じて主電動機出力が変動するようになっている。青函トンネル内の連続勾配で1000t級貨物を引き出すことから、交流25000V走行時はEH500形と同等の性能となるが、交流20000V区間走行時は電圧の関係から走行性能が制限される。ただし補助回路は電圧に依らず一定の出力を確保する必要があるため、ミニ新幹線で採用されている「三次電源タップ切替方式」により電圧変動を制御している。また、交流専用機である本形式は制動方式として回生ブレーキを採用している。試作車のみ発電ブレーキも搭載していたが、量産車では採用されず、試作機も後に使用停止されている。集電装置は新幹線供用区間に対応した新形式のシングルアームパンタグラフが採用された他、台車はEH500形のものをベースにしつつ、各軸端に振動センサや温度センサを搭載し、また脱地震発生時等のレールからの車輪逸脱防止用にガイド金具が取り付けられている。主幹制御器はEH500形と同じツインレバータイプのツーハンドルマスコンハンドルだが、本形式では新幹線車両にあわせグラスコクピットが採用されている。なお、保安装置は前述のDS-ATCに加え、ATS-SF、ATS-PF、ATS-Psに対応している。EH800形は2016年までに20両が製造され、同年3月のダイヤ改正で本格的な運用を開始した。以来、東青森〜五稜郭間の貨物列車牽引は本系列の専属となっている。他線区に乗り入れる運用はなく、この区間でなければ通常は見られないが、検査は大宮車両所で行われている。なお、専ら貨物列車の牽引を行うが、2017年までのごくわずかな期間のみE26系「カシオペア」の牽引を行ったことがある。後天的な改造として2019年に機関車の状態をリアルタイムで遠隔監視するリモートモニタリングシステムが実装されており、予防保全の向上と故障時の迅速な復旧が図られている。
2022,09,16 五稜郭 |