|
ED75形のうち500番台は、北海道で計画されていた交流電化に際し、同地での使用に耐える交流電気機関車の先行試作車として1966年に製造されたものである。基本的な形状はED75形基本番台に準じており、塗装も同一となっているが、こちらは全長が300o拡大している他、窓上につらら切りを備えている。この500番台では東北地方よりも酷寒地にあたる北海道での使用を考慮し、耐寒耐雪構造が強化されている他、制御方式に全サイリスタ位相制御が採用されている点が特徴である。サイリスタ位相制御そのものは1964年製の試作機関車ED93形(後のED77形901号機)で既に実用化の目途が立っていたことから採用に至っている。同制御の採用により、それまでのタップ制御で必要だったタップをなくした無接点での電圧制御が可能となり、搭載機器の小型化やメンテナンス性の向上が図られている。この他、整流器等の冷却風を床下から取り入れる構造を採用し、高圧機器類を機器室内に設置する等の耐寒耐雪への対応が図られた。なお、主電動機、歯車比、駆動方式などは0番台と同一であり、0番台との併結も可能な仕様となっている。落成後はまず東北本線で試運転が行われた後北海道に渡り、函館本線手稲〜銭函間で試運転に充てられた。この結果、厳冬期においての走行も問題なく行え、サイリスタ位相制御では制御器の無接点化やそれに伴う機器類の小型化等が図れるという成果は得られたが、サイリスタにより生じる誘導障害が問題となった。また、蒸気暖房装置を搭載していなかったことから特に冬季の旅客列車牽引ができず、北海道用の電気機関車の量産は低圧タップ制御方式(ただし一部にサイリスタを採用)かつ蒸気暖房装置が搭載されたED76形500番台となり、本番台はその後の増備はなく1両のまま推移した。ただし本番台で試用されたサイリスタ位相制御は、その後新造されるED77形量産番台等に誘導障害の対策などがなされつつ活かされることになる。1968年の函館本線電化に際しては岩見沢第二機関区に配備され、同時期に集電装置の換装などがなされた後、ED76形と共に使用を開始した。本機は前述の誘導障害の対策として岩見沢以北で使用された他、蒸気暖房装置を持たなかったことから旅客列車の牽引には用いられず、専ら貨物列車牽引に用いられた。以降20年近くに渡り1両のみ孤軍奮闘していたが、ED76形とは異なりJRには引き継がれず、1986年10月に廃車された。廃車後は解体されず現在の小樽市総合博物館に保存されている。北海道最初の電気機関車であることもあり、2010年には準鉄道記念物に指定されている。
2014,06,27 小樽市総合博物館 |