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DE50形は1970年に制作されたディーゼル機関車である。当時国鉄では幹線向けディーゼル機関車としてDD51形を量産していたが、DD51形は2機関を搭載しており保守性が課題であった。また、亜幹線向けには1機関搭載のディーゼル機関車としてDD54形が製造されていたが、こちらは主要機器について西ドイツ製のものをライセンス生産したものの、故障やトラブルが多発し保守に難のある機関車と評されていた。これら問題を解消すべく、DE10形で採用されていたエンジン・変速機を元に新たに開発したエンジン・変速機を各1基搭載し、かつ軸重の低い路線での使用も可能なディーゼル機関車として開発された。DE10形に類似した形態をもつセミセンターキャブの構造を有し、台車配置もDE10形と同じくAAA-Bという5軸としたことで、軸重が14tとなり亜幹線への入線を可能としている。本形式の特徴は、搭載したエンジンと変速機にある。1機関搭載ながら2機関搭載のDD51形と同等の性能を有することができる、国鉄の中速ディーゼルエンジンとしては最高性能となる機関出力2000PSの16気筒国産エンジン(DMP81Z)が搭載された。このエンジンはDE10形で採用されたエンジンを基本形として開発されたもので、互換性を有することから保守性に優れているといえる。変速機もDD51形で採用されたものを基本としているが、流体継手を内蔵することにより、国鉄ディーゼル機関車として初めてハイドロダイナミックブレーキの使用を可能とした。この機構を特に下り勾配において作動させることで、制輪子の摩耗の抑制が図られている。これらの採用により発熱量が既存の機関車に比べて増加するため、2位側ボンネット(短い側のボンネット)に冷却系統機器類を集約しており、同所のラジエーターが他の機関車と比べて非常に大型となっている。また本形式は重連総括制御にも対応しており、他の液体式ディーゼル機関車と重連総括を行うことが可能である。運転台は本線用機関車であることからDD51形と同様正面を向く形となった他、ディーゼル機関車として初めてマスコンが左、ブレーキが右という配置になっている。なお、本形式は本線上の高速貨物列車及び固定編成の客車列車の牽引を想定していたため、蒸気暖房装置は搭載されていない。DE50形は前述のとおり1970年に1両が製造されて稲沢第一機関区に配置され、同年から翌年にかけて試験に供された後、岡山機関区に配置されて勾配線区である伯備線の貨物列車を中心に運用された。本機はいわば量産先行車としての位置づけで、試験後はDD51形の後継として量産が予定されていたが、折しもオイルショックが発生しディーゼル機関車の需要が減少したこと(伯備線も電化が決定し1982年に電化されている)、本線用ディーゼル機関車の増備がDD51形に一本化されたことからその後の増備はなく、結果的に1形式1両の希少車となった。1970年代中期まではDD51形と共に伯備線の貨物列車に用いられたが、走行不能となる故障を起こしたことで運用を離脱し、以降1986年に除籍されるまで岡山機関区に留置されていた。国鉄分割民営化以降もその姿をとどめ、JR西日本の岡山気動車区に長らくの間留置されていたが、2002年に津山駅構内の扇形車庫まで回送され、その後同地に整備された津山まなびの鉄道館で保存されている。
2024,10,20 津山まなびの鉄道館 |