キハ58系kenji
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 1992年に開催された「三陸・海の博覧会」にあわせ、そのアクセスに用いる列車として盛岡客車区に配置された観光用車両である。キハ58系の改造車であり3両で1編成を組むが、このうちの2両は1987年に「サロンエクスプレスアルカディア」として改造された車両に再改造を施したものである。中間に連結される車両を除き、前頭部は元の車体を切断し、新設したハイデッキ構造の鋼体を結合させた展望車となり、その外観はJR北海道が投入した「アルファコンチネンタルエクスプレス」やJR西日本の「ゆぅトピア」に酷似していた。「サロンエクスプレスアルカディア」は新潟に配置され団体臨時列車を中心に使用されていたが、1988年に1両が火災により焼失して廃車され、残る2両は再改造されるまで保留車扱いとなっていた。盛岡への転属に際しては、廃車となった車両の代替で1両が展望付き先頭車へと追加で改造され、再度3両で1編成を組むようになった。「アルカディア」からの改造車は元々6枚窓であった展望車の前面窓は桟が取り払われて前面3枚窓となり、前照灯・尾灯は角型化されている。追加改造車も同様のデザインで改造されているため、外観上の差異は殆どない。当初外装は白地を基調として側窓周辺及び展望室から前面の窓下が濃淡ブルーに塗装されたもので、三陸の海をイメージしたものとなった。車内は2+2人掛けのリクライニングシートを基調とし、団体利用での使用を想定しAV機器を備える。中間車は「アルカディア」時代はサロンスペースとなっていたが、再改造時に通常の客室に改められている。ただし客室の半分は通路が端に寄せられ、1+2人掛けのリクライニングシートが千鳥配置されるという変則的な内装となっている。この座席は45度単位で向きが変えられ、更に6人向かい合わせに着座することができるようになっている(同様の内装は同じキハ58系改造の「グラシア」やJR西日本の「サロンカーなにわ」でも見られる)。なお、「アルカディア」ではグリーン車扱いだったが、こちらは普通車扱いとなり、種車と同じ車番に戻されている。本車は1992年に「三陸マリンライナー」として運行を開始し、「三陸・海の博覧会」終了後、「kenji」という愛称がつけられた。愛称は東北地方を代表する作家である宮沢賢治に由来する。以降、団体臨時列車の他山田線や釜石線を中心に臨時快速にも用いられる等、東北を中心に幅広く活躍した。2005年と2013年に塗装変更が施されており、2005年からは緑ベースの塗装に金色の帯が配された塗装となり、愛称表示器もLED化された。更に2013年末からは青地に金色の帯を巻いた姿に変更されている。2013年の時点で既に他のキハ58系は全て退役しており、同車がJR線で現役を維持する最後のキハ58系であった。最後まで稼働率は高かったが、老朽化もあり2018年9月を以て現役を退き、同月中に秋田総合車両センターに回送された。これを以てJR線上からキハ58系は完全に姿を消している。

 2015,06,21 山 形


■Variation
 2号車のキハ28-2010。前方の扉が埋められ、サロン席が設けられた関係で側窓の配置・形状も大きく変わっているが、運転台は他の2両と異なり原型を留めている。同車は元々1961年製のキハ28-10であり、キハ58系列のみならず営業運転に就く気動車としても最古参の車両であった。

 2014,05,04 盛 岡
2021/02/19